この記事を閲覧している多くの方は、きっと住宅購入検討中で、候補となる土地、建売、中古住宅等の立地が市街化調整区域ということで、ここに辿り着いているものと思います。
結論から先に言うと、選べる状況で敢えて市街化調整区域を買うメリットはほとんどないです。
よほど土地に精通していて、市街化調整区域についても良く理解し、今後の展望、その土地を売却する時のことまでシミュレーションできている玄人でしたら、購入しても良いと思いますが、住宅購入後は長くその土地で暮らしたい、購入後も住宅の資産価値を維持したい、すぐすぐ売却する予定などない、不動産投資ではなく居住用である等の理由があるのなら、市街化区域の土地で再度探した方が無難です。
それでは、数ある市街化調整区域のデメリットの中でも代表的なものを3つ述べます。
資産価値が見込めない
これが市街化調整区域の土地の一番のメリットなのですが、土地代は安いです。場合によっては、近隣の市街化区域の土地の半値で買えることも珍しくありません。道路挟んで、市街化調整区域に入る場合などは、距離が近いのに半額になるなんてお得と思うかもしれません。
よく勘違いされている方がいますが、安いからお得なのではなく、本来お得というのは、価値あるものが安く買えることを指します。市街化調整区域の土地はもともと安いので、安く買えることはお得ではありません。価値相応の価格で購入するわけです。もちろん購入した土地は、その価値しかないので、売却する時も、同じ価格になります。
問題は、将来の価値です。市街化区域の土地というのは、土地全体の相場が変わらない限り、将来的にも購入時と同じような価格で売却できる可能性が高いですが、市街化調整区域は場合によっては、0円でも売れない土地に変わる可能性があります。
住宅地では特にそうですが、土地購入者の目的ってほとんどの場合家を建てることなんですが、市街化調整区域の場合、その土地に家を建てる場合、事前に自治体に申請して許可をもらう必要があるのです。現在も同様です。売り出されている土地の多くは、申請すれば許可がもらえる土地の場合がほとんどです。現在はまだまだ人口も多く、土地がひっ迫しているエリアも多いため、市街化調整区域の土地でも、申請すれば建築許可が出る市街化調整区域の土地が多いです。
但し、許可制というのは自治体の方針でいくらでも厳しくなる可能性を秘めています。将来建てかえる時に、一切許可が出なくなる可能性も0ではないです。
もし、将来売却する時に、家を建てられない土地として売り出すことになれば二束三文でしか売れないでしょう。
現在、市街化区域の土地が1500万円、同等の市街化調整区域の土地が800万円で売り出されているとしましょう。700万円安いからと市街化調整区域の土地を購入すると痛い目に遭う可能性があります。
もし30年後に売り出そうと思い、自治体に問い合わせたところ、建て替えの許可は出せないと言われれば、建築不可で売り出すしかなくなるので、土地価格が100万円以下になる可能性もあります。
つまり、市街化区域の土地は購入時と同じ1500万円で売り出せたとしても、市街化調整区域の土地は100万円にしかならないので、700万円も損失が出て、安物買いの銭失いになる可能性も多いにあります。
人口が減る一方、国の政策、自治体の政策がコンパクトシティを追求している現在において、今後市街化調整区域の土地が見直され、資産価値が上がる可能性は極めて低く、許可が出なくなり、二束三文の価値になる可能性が多いにある中で、敢えて購入するメリットはほぼないと思います。
生活が不便
まず以下のイメージ写真をご覧ください。
出所:https://www.pref.miyagi.jp/site/tosikeikakugaiyou/tochiriyou-kuikikubun.html
市街化調整区域は市街地から離れたところにあり、日々の生活では、地方なら車での移動が必須となります。子供の学校も離れていることが多く、苦労します。
このような苦労は、目に見えない時間とお金を日々少しずつ浪費するため、気づかないのですが、30~50年暮らすとなると、巨額の損失となります。
例えば、市街化区域に住めば、子供が小学校に片道徒歩5分で行けるとしましょう。しかし市街化調整区域に住めば20分かかるとしましょう。往復30分の差が生まれ、この時間を勉強につぎ込めば、将来かなりの学力差になる可能性があります。しかも、友達が近隣に暮らしていない可能性が高いので、友達とのネットワーク拡充にも不利になります。
日々の生活も大変な不便と損失を被ります。例えばスーパーに行くにしても、車で15分かかることもあれば、病院や図書館、様々なレジャー施設などもすべて近隣にはないため、車で時間をかけて移動する必要があります。ガソリン代と移動時間を累計すれば、30~50年で数百万円どころか何千万円も損失することになる可能性があります。これが1人ではなく、家族全員が負担しなければならないので、損失は計り知れません。
毎日の生活が不便というのは、それが本当にストレスになります。住宅購入の時点で、このような苦労やデメリットが分かっているのに、敢えて市街化調整区域の土地を選ぶ必要はないわけです。
土地代以外にお金がかかる
前述で、ガソリン代などが余分にかかることは説明しましたが、実は土地購入時にも別で費用が発生したり、購入後も何かとお金が必要になる可能性があります。
分かりやすいのは、水道の引き込み費用や浄化槽設置費用です。市街化調整区域の土地は、基本水道などの整備がされていないことが多いので、土地購入時に100万円近く払って、これらを整備する必要があります。また、仲介の不動産業者などが自治体に建築申請をする費用を請求される可能性も高いです。許可が出るとしても、申請する必要があるわけで、この申請には専門的な知識も容易する資料も多数あるわけで、素人ではとても対応できません。私がとある不動産業者に聞いたところ、一律で30万円いただいているとのことでした。業者や許可の難易度によっては50万円になることもあるようです。
また、積雪のあるエリアですと、基本的に除雪車は来ないです。雪が降れば、町内で協力して、早朝から雪かきをすることもあります。対応が厳しい町内は、業者に除雪をお願いし、各家庭から数千円の負担を求める場合もあります。これも毎年のことなので、結構な負担になります。
将来のことなので、分からないですが、国の方針などが変われば、市街化調整区域に対して金銭的な負担を求めてくるようになる可能性も0ではありません。
出所:https://www.pref.miyagi.jp/site/tosikeikakugaiyou/tochiriyou-kuikikubun.html
この写真で見ても明らかですが、救急車などは、市街化区域内に待機していることがほとんどで、病院もほぼすべてが市街化区域内にあります。
もし、市街化区域の離れたところの家から救急車の出動依頼があれば、救急車はかなりの時間と距離をかけて、その家まで行き、また市街化区域の病院まで搬送する必要があります。搬送に時間がかかることは、患者の命にとっても大きなデメリットですし、救急車にとっても対応に時間がかかるので、余分なコストと時間がかかります。また、別の患者の対応ができなくなる可能性もあるため、市街化調整区域の家庭が多ければ多いほど、対応できるように多くの救急車を用意しておく必要があるため、余分なコストがかかります。また、電力会社の電線なども市街化区域から、1世帯のためだけに電線を延長しなければならない可能性もあります。これらは現時点でも起こっていることですが、今後市街化調整区域の人口が縮小すればより顕著になるでしょう。
これらの余分なコストを国民全体で負担するのもおかしいとなり、将来的に市街化調整区域のための対応コストは、「市街化調整区域税」などの名目で固定資産税に上乗せされる可能性も0ではないと思います。
簡単に3つの大きなデメリットをお伝えしましたが、市街化調整区域を検討されている方は、これらのデメリットを理解のうえ後悔のない土地選びをされることを強く勧めます。
なお、市街化調整区域については以下の記事も参照願います。
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