結論、新品より安く買えますが、お勧めしません。
定価より30~40%安く買えるのは大変魅力的ですが、キッチンの最終的な価格って実は非常に複雑な仕組みになっているんですよ。
まず施主がショールームに行くと、ショールームスタッフがキッチンの説明をしてくれますし、キッチンの定価見積をくれます。しかしながら、施主は原則、ショールームから直接キッチンを買うことはできません。あくまでも、商品を見て、参考に定価見積をもらうだけです。
実際施主がほしいキッチンを決めた場合、設置、施工をお願いする工務店などの業者に連絡して、業者と契約をします。業者はその後、キッチンメーカーからキッチンを発注し、施工まですべて完了させ、業者が施主にキッチン代と施工代を請求します。
業者はメーカーからキッチンを卸値で買いますが、実はこの価格はブラックボックスで施主には分かりません。業者の強さによるのですが、そのメーカーから多く契約している規模の大きな業者、長く付き合いのある業者はメーカーと交渉して割引率を高く設定しております。定価の7割引き程度で仕入れている業者も多いです。
つまり施主は割引率の高い業者に依頼すれば、一般的には安くキッチンを購入することができます。
もちろん業者も利益を取りますので、施主に請求するキッチン代は、卸値に利益を乗せた額になります。キッチンメーカーにより異なりますが、一般的に施主に請求するキッチン代は定価の半額程度になることが多いです。
分かりやすく数字で表すと、定価が100万円のキッチンがあるとします。
業者は7割引きの30万円で仕入れ、利益20万円分と施工費40万円分を含め90万円で施主へ請求します。
施主の請求書には、キッチン50万円、施工費40万円と記載されているはずです。
もし施主が展示品処分の3割引きのキッチンをショールームで確保したとすれば、業者はその展示品を仕入れることになります。
例えば定価100万円のキッチンが3割引きの70万円になっており、その7割引きの21万円で仕入れることになります。定価では、30万円も安くなっているように見えても、仕入れ値で見れば7割引後の価格になるので9万円しか安くなっていません。
もちろん業者は、同じように利益を20万円確保し、施工費40万円を追加して請求するので、施主の請求書には、キッチン代41万円、施工費40万円の計81万円が請求されます。
定価で見れば30万円も安く買えたと思っていたが、結果は9万円の差となるわけです。
しかしながら、多くの業者がそうだと思いますが、展示品になると施工費が上がる可能性があります。展示品は一度組み立てたものを再度ばらして、納品するので、ビスの後などが劣化していることや、再度組み立てるのは新品よりも手間がかかるので施工費を少し多めにとる業者が多いと思います。例えば3万円加算されれば、差額は6万円となります。
それでも、同じキッチンが6万円も安く手に入るならお得だと思いますよね?
同じキッチンですけど、1年程度展示されていた中古品です。しかも、ただ展示されて、観賞用なら問題ないのですが、不特定多数の方が触っています。しかも、人間というのは、不思議なもので、自分のものでないと扱いが雑になります。子連れも多いので、子供も面白がって扉を開閉したりします。見て回る時って、とりあえず使い勝手を見るために一通り扉を開閉したり、天板などを触ったりしますよね。換気扇は音を聞くために電源を入れることも多いと思います。そもそもショールームによっては常時換気扇をつけているかもしれません。換気扇は家電製品なので運転時間が長いとその分故障も早いです。しかも買い替えるとなると10万円程度はします。力強く閉める方や汚れた手で触る方もいるでしょう。子供なら手についた鼻くそを見えない裏側などにつけているかもしれません。固い鞄がぶつかって小さな傷がついているかもしれません。窓際に設置されていれば日差しで多少の変色をしているかもしれません。とにかく単に展示しているだけでなく、結構な頻度で使用された中古品になります。
施工費含めた支払い総額で見れば、90万円が81万~84万円程度になるだけで10%も変わらないくらいの金額差です。
購入すれば少なくとも20年以上は使うであろうキッチンを妥協するのはもったいないです。
展示品なら種類や色やデザインなども選べないので色々妥協することになります。
よくある失敗が、ショールームにあるのだから新品同様だろう、定価で見れば30万円も安くなる、1点物で早い者勝ちだからすぐに確保したいなどの本来の趣旨と違う解釈で展示品を衝動買いしてしまい、納品後、使用感が見られるし、請求書の価格は思った以上に安くないし、やはり自分の気に入ったキッチンを使いたかったという後悔が残るしで、後悔される方が多いです。
たまたま自分の希望するキッチンが展示品になっており、見た限り非常にきれいな状態というならば、安くなった分お得かもしれないですが、狙ってできることではありません。
むしろ展示品はお得という価値観で見ると、どうにか展示品を買いたいという意識になってしまい、展示品に目が行きがちです。
キッチンは住宅設備の中でも最も重要で、最も使用頻度の高い設備となります。安さに気を取られて大きな失敗をしないように注意していきましょう。
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