まずはなぜ市場にリフォーム済み中古物件が多数出てくるのか考えてみましょう。
私も長年中古住宅市場を見てきておりますが、個人が所有物件をわざわざリフォームして売り出す例はほとんど聞いたことがありません。理由は簡単で、リフォームにかけた金額以上に高く売れる可能性が低いからだと思います。
例えば、500万円で仕入れた築古戸建を500万円かけてリフォームしたとしましょう。売買時の諸費用なども加味すると、1200万円くらいは売値がないと厳しいと思いますが、実際、もともと500万円で売り出されるような築古戸建についてリフォームしたからと言って、高く売れるとは限りません。赤字になる可能性も高いですし、そもそもが不動産の売買もリフォームもかなりの時間と手間がかかります。全くうま味がないのが分かると思います。
そうなると、このような事業に手を出すのは業者ということになります。
ではなぜ、業者は、リフォーム済み物件を販売するのでしょうか。
それは、単純に利益になるからです。
世の中には空き家が多数ありますし、日々不要な築古戸建は市場に出回っています。地方では過疎化も進んでいますし、高齢者が亡くなると、住んでいた戸建は子世代へ相続されますが、子が遠方に住んでいると、不要ですし、できるだけ早めに現金化したいと思うのです。特に相続になると、複数名が絡んできますので、早めに現金化する必要があります。個人売買を想定して不動産サイトなどに掲載しても、売値も低いし、手間もかかるので、不動産屋はこのような安い相続物件を入手すると、基本的には懇意にしている業者に声をかけます。
業者も相場より安く、再販することで利益になると判断すれば、現金一括で買います。
買取再販をする業者は基本的に自社内もしくは提携しているリフォーム会社があり、一般客よりかなり安くリフォームを行うことが可能です。特に全国展開しているような会社ですと、同一のキッチンなどの設備を大量発注して、破格の値段で購入します。
つまり、破格で仕入れた戸建ての床や壁、キッチン、トイレ、洗面所、お風呂などの目に見える表面的なところ、購入者が気にする点のみをリフォームし、さらに間取りも壁などを取り除き、LDKなどの人気の間取りに変更し、再販するのです。
簡単なイメージで言えば、500万円で仕入れた戸建てに300万円のリフォームを加えて、1500万円で売るようなものです。売れれば利益は700万円になります。もちろん不動産屋に支払う仲介手数料や登記費用、その他諸経費を含めると利益は少し減りますが、十分に利益のでる取引になるわけです。
購入者からしても、新築だと3000~4000万円するようなエリアで、見た目新築みたいに綺麗な中古が1500万円で売り出されていれば安いと思い飛びつくわけです。
もちろんですが、新築とこのようなリフォーム済み中古では決定的に違う点がいくつもあります。
重要な違い、特にデメリットは以下の点です。
・不動産としての価値は、リフォーム前の中古住宅に近くなる
不動産の価値は、土地値と建物価格で決まりますが、築古戸建ての場合、価値は土地値か建物が取り壊すくらい古い場合は、土地値ー解体費用になります。
もし、何か理由があり、短期で売却することになれば、1500万円で購入したとしても、業者が仕入れた価格である500万円に近い価格になってしまいます。もちろん、リフォームをした分や買取再販業者が相場より安く購入したことを加味すれば、500万円よりは高い金額になると思いますが、1000万円はいかない金額になると思うので、損をすることは間違いないです。
・耐震性能が低い
耐震改修は、リフォームの中でもかなり費用のかかる工事になり、耐震改修を含んだリノベをするとなると、基本的にリフォーム費用が1000万円を超えるような工事を想定しなければならず、利益が出なくなるので、業者は基本やらないです。多少の耐震補強をする場合もありますが、やはり中古住宅は耐震性能が低いです。築古の中古住宅は旧耐震と呼ばれる耐震性能の低い住宅が多数あり、場合によっては震度6でも倒壊する危険があるので非常に危ないです。どんなに内装が新築のようにきれいでも、地震であっという間に倒壊するリスクのある家は避けたいですよね。
・断熱・気密性能が低い
壁、天井、床が無断熱か、気持ち程度にしか断熱材が入っていないかつ窓は単板ガラスのアルミサッシなので、冬は凍り付くように寒い可能性があります。また夏は外よりも暑くなる可能性があります。つまり快適性がかなり落ちますし、冬はヒートショック、夏は熱中症で命を落とす危険もあるので、笑いごとではありません。
出所:https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20231218_31838
家が寒いと、皆さんエアコンや石油ストーブで暖房しますよね。断熱性能の低い家って暖まらないし、電気代かかるしで、光熱費を垂れ流しにするんですよね。そうなると、電気代気にしちゃいますから使用を控えたりリビングなどの最小限の範囲しか暖房しないわけです。よって、廊下、洗面所、お風呂は外気に近いような室温になるので、とにかく寒いんです。暖かいところから寒いところに行き、ぶるぶる震えながら、服を脱ぎ、急いでお風呂に入り温まるってよくある光景ですよね。私も築古の家に住んでいた頃はお風呂が本当にストレスで、特に浴槽から出た時の寒さが苦手でした。若ければ、リスクは低いと思いますが、加齢と共にリスクが上がるので、できれば避けたいですね。
驚きの結果ですが、交通事故の4倍も死亡者数が多いようです。以下に断熱性能、気密性能が低い家が危険かが分かります。
・配管の劣化で水漏れのリスクがある
水回りは交換している例が多いですが、ほぼ間違いなく配管はそのままだと思います。確率は低いと思いますが、将来的に水漏れが発生した場合は、配管のどの部分から水漏れしているか調査が必要ですし、気づくまで、漏水するわけなので、水道代が余分にかかります。さらに特定するための調査費用や交換費用で、軽く数十万円かかる例も珍しくありません。どんなに表面的な見た目を綺麗にしても、目に見えない箇所で劣化が進んでいれば、修繕費は多めにかかります。
・税金控除や補助金を受けられない可能性が高い
住宅購入において、一番大きい税金控除が住宅ローン減税です。新築なら原則13年、年末時点の借入残額の0.7%還付されます。単純に3000万円なら21万円の還付になります。リフォーム済みの中古住宅でも対象になるケースが多いですが、旧耐震の住宅は原則対象外となります。さらに、新築対象の補助金は結構多く、100万円以上のものもあるため、補助金がもらえない分不利となります。
・住宅の保証期間が短い
一般的に築年数が古ければ古いほど、トラブルは増えますが、リフォーム済中古を業者から買うと瑕疵担保責任は2年しか付きません。新築なら10年必ず付きますし、多くの会社が延長保証もやっています。家は高額な買い物になりますし、修繕に何百万円とかかることもあるので、保証の有無はかなり重要です。
逆にメリットについてですが、新築と比べると安いことのみです。とにかく価格重視、特に高額な住宅ローンが組めない人にとってお勧めとなります。
また、リフォームをしていない中古住宅と比べると、購入後すぐに住めることと、自分でやるより安く抑えられる可能性がある点がメリットとなります。
買取再販業者が500万円で仕入れるような住宅を個人が買うとなると、安く見つけることは困難なので、800万円程度で買うことになると思います。さらに業者なら300万円でできるリフォームも個人で、業者に委託してやると600万円位かかる可能性が高いです。また業者から直接買う場合と違い、個人の売主から戸建てを購入する必要があるので、仲介手数料もかかります。また売買契約やリフォームにかなりの日数がかかるので、その間は賃貸に長く住むことになるので、余分に家賃を払うことになります。特にリフォーム中は、住宅ローンと家賃がダブルで発生するので、家計にかなり厳しいと思います。
このような理由から、リフォーム済の中古住宅には、新築やリフォームをしていない中古と比べメリットがあるのです。
コメント