過去最高値を更新し続けるS&P500の米国株ですが、現在投資することは得策でしょうか。一番怖いのが、投資を始めた後にバブルがはじけて、大暴落になることです。このように投資時期を誤って大損することを避けるためにドルコスト平均法という投資方法があります。これは毎月いかなる状況でも同じ金額を投資する方法です。こうすることで、株価が高い時は少ない量を買いますし、株価が下がれば多くの量を買えるわけです。メリットは、株価はいつ上がって、いつ暴落するか誰にも分からないので、投資時期を分散させて、リスクを分散させて、長期目線で投資をすることで、平均以上の利回りが狙える点です。
2024年現在、S&P500は過去にないくらい高騰しており、投資している人全員が含み益になっている状況です。そしてSNS、YouTube、多くの記事などでは、素人はS&P500に投資しておけば間違いないと言っています。私の周りの金融関係者も素人が投資をするならS&P500が一番確実に安全に稼げるはずというくらいです。さらに驚きなのが、S&P500に投資すると、長期で年利4%増えるシミュレーションで老後資金などを算出している記事も本当に多いです。
前置きが長くなりましたが、いくつかの指標を用いて現在のS&P500の株価がバブルなのか、割安なのか、適正なのかを判断する方法を解説します。
まずはじめにS&P500の推移をご確認ください。
ここでは、分析しやすいように1995年~2010年の15年と2010年から2024年の約15年の前半、後半に分けます。
前半の15年は、1000ドル付近を推移しており、何度も上昇と暴落を繰り返しておりますが、際立った上昇は見られません。対して、後半15年は1000ドル→6000ドルと6倍くらい上昇しております。
株価は、経済力を表しており、S&P500は、アメリカの主要500社の平均的な株価を示したものになるため、前半15年より後半15年は6倍近く成長した、もしくは成長を見込まれたことになります。
そもそも株価というのは、企業の現時点の時価総額や売上、利益及び将来見込の利益をすべて織り込んで決まっています。つまり株価は、現時点の経済力と今後の期待される経済力の総合値ということになります。
現時点の経済力は、企業の時価総額や今期の利益を見ることで測定できますが、将来の経済力は未知数です。こればっかりは各自の予想になります。分かりやすい例は、製薬会社が、がんの特効薬の開発に成功し、近い将来製品化することで、がん患者の治療が容易にできるなどのニュースがでれば、将来的に莫大な利益を生む会社となりますので、将来の経済力が大幅に上がり、株価が急騰します。逆に、原子力発電所にトラブルがあり、将来長きにわたり、修繕や維持管理費が発生し、国民への賠償金などの問題が出てくるようなニュースがでれば、将来の経済力が大幅に落ちるため株価は暴落します。
直近15年でS&P500が6倍になっているということは、現時点の経済力と将来の見込み経済力の総合値が15年前と比べて6倍になっていれば、適正な価格水準、逸脱して高くなっていればバブル、逸脱して低くなっていれば割安ということになります。
現在の経済力を測るには、国が1年間に生み出した利益を合算した米国のGDPを確認すると分かりやすいです。
出所:https://ecodb.net/country/US/imf_gdp.html
ざっくりGDPを見てみると、1995年時点で7600ドル程度、2010年時点で15000ドル程度、2024年時点で30000ドル程度となっています。つまり前半15年でGDPは2倍になり、後半15年でもGDPは2倍になっているので、現状の経済力の観点で見れば、株価は同じくらいのペースで上がっていってもおかしくないです。
さらに面白いのが、2020年から2024年の直近について、急激に名目GDPが増えているのが分かります。この数年で経済が急激に成長したのかと言えば、実感としても感じておらず、物価の影響が大きいのではないかと推察できます。
名目GDPは通貨の額で測っているので、物価が2倍になれば、名目GDPも2倍になります。持ってるお金2倍になっても、モノの価格もすべて2倍になっていれば、買えるものの量は同じなので、豊かになっているわけではないのです。しかしながら、株価も1つのものと見なせるので、お金が出まわって、株式市場にお金が流れれば株価も上がります。ここ数年はコロナ対策で世界中の通過量が激増したことが分かっています。
1つの仮説ですが、株式市場に大量のお金が流れていき、株価を押し上げているとも考えられます。
では通貨の影響を除外した実質GDPはどうなっているのでしょうか。
出所:https://ecodb.net/country/US/imf_gdp.html
名目と違って、緩やかな右肩上がりになっています。ここ数年も急激に上がっていることはありません。面白いことが、1995年~2010年の15年と2010年~2024年の15年の上昇率がほぼ同じということが分かります。もちろん未来の期待による株価への影響もありますが、現在の株価が通貨が多くなったインフレによるものだと仮説すれば、本来の株価よりも随分高くなっている可能性があります。
今後金利上昇などにより金融政策の引き締めが起こった時に、株価がどれくらい変動するかによって、今の株価がバブルだったのか、適正だったのか、過小だったのか分かるでしょう。
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