初めての住宅ローン 最も分かりやすく説明

1-5-1. 住宅ローン関係

さっそく問題です。住宅購入者の何割が住宅ローンを使って購入しているか!?

答えは90~95%だそうです。

本記事では、住宅ローンを初めて借りる方向けに分かりやすく基本情報を解説します。

まず、赤信号みんなで渡れば怖くない!に倣って、住宅ローンみんなで借りれば怖くない!という意識は捨ててください。住宅購入者のほとんどが利用しているから安心安全ではありません。

住宅ローン=借金

であることには変わりありません。

通常の借金と異なるのは、金利がかなり低く抑えられている点と、土地建物の裏付けがある点です。

通常の借金ですと、消費者金融やカードローンなどがありますが、年利10%近くと高く、基本的に無担保なので、返済に滞れば、現金を貯めて返済していく必要があります。

一方住宅ローンは、銀行間の金利競争も激化していること、実際に住んでいる家であることから、借りている人が自宅を守るためにどうにか返済しようと努力すること、銀行が抵当権を住宅に設定し、万が一貸し倒れの危険が出てくれば、その住宅を任意売却や競売の方法で現金化できる手段があることから、かなり金利を低くして借りることができます。

時期によって変動しますが、2024年11月現在では、0.4%程度となっております。

世間一般には、ローンを借りるより、現金一括で購入した方が、金利負担がない分お得と考えがちですが、住宅ローンに関しては、違う場合も多いです。というのも、住宅ローン減税制度があり、新築の場合、条件を満たせば、13年間毎年借入残額の0.7%が減税の形で還付されるというものです。もし、0.4%の金利でローンを借りていれば、毎年、0.7%-0.4%=0.3%分が現金還付されます。もし4000万円を35年ローンで借りていれば、13年間は毎年、10万円分くらいは利益が出ることになります。借金しているのに、お金がもらえるという逆さや状態です。

もちろん変動金利で借りているので、今後金利が上がれば、一気に負担は増え、逆さやどころではないですが。

前提が分かったうえで、実際に住宅ローンを借りるための手順を紹介します。

借入額を決める

一番重要なことです。借入額を間違えると最悪自己破産します。世間一般では、借入額は年収の5~7倍位と言われますが、かなり余裕を持った額にしてください。もしくは、毎月の手取り金額の3割を上限と言われますが、全くあてになりません。子育てには1人2000万円の予算が必要と言われるくらい意味のない数字になります。結論、人によって違います。毎月、住居費以外にいくら支出しているか、今後必要となるお金、現在の年齢などによっても変わってきます。ではどうやって決めればいいんだと言われそうですが、私のお勧めは、

住宅ローン支払額上限=(現在支払っている家賃+住宅購入のための毎月積立額)-1万円

です。

こうすることで、今の生活水準と変えずに生活を続けることができます。

現在賃貸暮らしで、毎月家賃を支払っており、別途住宅購入のための貯金をしていたとすると、住宅購入後は、その金額をローン返済額に充てれば良いので、今と変わらない暮らしができます。

なお住宅を購入すると、ローン支払い以外に、固定資産税の支払いや修繕積立金の確保、光熱費の増額等の可能性があります。毎月平均1万円は確保すべきなので、ローンの金額は1万円少なくします。

住宅会社が提案するローン金額の上限は、年収から算出した借入額の上限の場合が多く、ほとんどの人にとって、かなりの負担になるので、私はおすすめしません。

例)現在家賃8万円、住宅購入のための積立が2万円だとしたら、合計10万円を住宅のために支払っていることになる。そこから1万円を引いた9万円が毎月の住宅ローンの上限額となる。

シミュレーションをすると、変動金利0.4%で借りて、毎月の支払額を9万円にしようとすると、およそ3527万円借りることができる。

冒頭で話した住宅ローン控除で戻ってくるお金は、今後変動金利が上がった時の対応費としてとっておくと良い。

つまり、住宅ローンの支払額から逆算して、住宅購入費用の予算上限は3527万円という数字になる。

もし、仮に35年全期間固定金利にすれば、金利は1.8%くらいまで増えるので、借入額は減らさないといけない。但し、今後金利が上がる心配がないので、13年間毎年還付される住宅ローン控除額を加味して、毎月の支払を多めに9万5000円にすると、

つまり、住宅ローンの支払額から逆算して、住宅購入費用の予算上限は2959万円という数字になる。

変動金利の方が固定金利の場合より568万円多く借りられることになります。では次にどっちを選ぶべきか検討してみましょう。

借入の方法は変動金利と固定金利どっちにするのか

正直住宅ローン選びで最も悩ましいところであり、最も難しいところでもあります。

簡単に両者の違いをお伝えします。

変動金利:金融機関が最優良企業等に融資を行う際の最優遇金利のうち、1年以内の短期貸付の際に適   用される短期プライムレートによって金利が決まります。この短期プライムレートは日銀の金融政策や景気の動向などに左右されます。

出所:https://mogecheck.jp/articles/show/oaYekBdVENk02yGgJRLn

見ていただければわかると思いますが、ここ30年程度、ほとんど動いていないのです。ある意味底の状態でずっと推移しています。

実際の変動金利は、一般的にこの短期プライムレートに1%上乗せした金利を基準金利として、そこから優遇金利という形で金利を割引、変動金利を決めています。

つまり、今後日銀の金融政策の変更などで短期プライムレートが上がることになれば、変動金利も上がる可能性が極めて高いです。

なお、基準金利からの割引が各銀行で違うため、変動金利は銀行間で異なります。

固定金利:国債市場で取引される10年国債の利回りを基準として金利が決定されます。少し難しいですが、10年国債の利回りと言っても、実際に利息がもらえるような代物ばかりではないです。例えば、10年国債というのは、発行した日から10年後に償還を迎え、その時に額面金額が償還されるのですが、今日時点で9年目を迎えた額面金額100万円の10年国債が約99万円で取引されていれば、99万円の投資で1年後に100万円償還されるので、及び利率1%となります。もし、今後金利が上がると予想すれば、現在持っている国債よりも利率の高い国債が発行されると思い、手放す人が増えます。そうすると実際に売り圧力の強い国債の価格は下がっていき、実際の国債利回りは上がっていくわけです。例えば、売られた国債の価格が98万円に下がり、次に買った人は、持っておけば1年後に100万円償還されるので、99万円の投資に対して2万円の利益となり、利率は2%程度に上がります。このように投資家が将来利息が上がると予想すれば、10年国債の利回りが実際に上がり、固定金利も上がります。

多くの場合、投資家が今後の金利が上がると予想するのは、日銀の金融政策や様々な経済指標を先読みし、将来的な金利上昇を見込んでいるので、短期プライムレートが上昇する前に10年国債の利回りが上がる傾向があります。つまり、変動金利より先に固定金利が上がっていく傾向があります。

両者の金利の違いを理解したうえで、両者のメリット・デメリットを列挙して検討しましょう。

【変動金利】

メリット1:金利が低いので、毎月の支払額を同じにすると、借入額を増やすことができる。

→金利負担額が少なくなるので、より多く借り入れても、毎月の支払額を抑えることができます。

メリット2:取り扱っている金融機関が多いので、競争原理からより金利が低くお得になる。

メリット3:繰上返済や一括返済予定者に有利

→借入当初から、金利負担額が少なく済むので、万が一金利が大きく上がった場合に、繰上や一括で返済してしまえば、トータルで支払う金利負担額を低く抑えられる。

デメリット1:万が一金利が上がれば、負担が一気に増える

→金利部分の負担がかなり大きいため、支払額が増えます。5年ルールというものがあり、5年間は支払額を変動させないようにして、125%ルールというもので、6年目以降も支払額は125%までしか上がらないように、急激な支払額の増加を抑えるようにしています。但し、金利負担額は増えるので、元本の返済割合を減らし、金利を多く払うようにするだけです。つまり、最後に元本が多く残るので一括返済を迫られる危険性があります。

出所:https://www.sbishinseibank.co.jp/retail/housing/column/vol72.html

デメリット2:借り換えの可能性があり、手数料が高くなる

将来金利が上がった時に、金利が安い銀行に借り換えをすることもできますが、その際に手数料がかかります。金利の安いネット銀行やメガバンクは借り換え時の事務手数料が、借入額の2%となっている場合が多く、残額2000万円を借り換えしようとすれば40万円はかかることになる。

【固定金利】

メリット1:借入期間の金利を固定できる。万が一金利が上がっても安心

これが最大のメリットです。もし今後金利が5%とかになっても、金利が変わらないので、返済額がずっと一定になります。基本的にインフレに強いです。

メリット2:将来的な金利変動のストレスから解放される

金利が固定されることで、日々の金利変動を気にしなくてよいですし、将来的な借り換えの必要性などもほぼ考えなくてよいので、精神的にも楽になりますし、時間やお金も節約できます。変動金利は、急な金利上昇時のストレスが半端じゃないですし、金利を下げるために借り換えなども検討しないといけないので、時間も借り換え時の手数料もかかります。

デメリット1:変動金利より金利がかなり高い

現在変動金利最安が0.4%程度にも関わらず固定金利は1.8%程度あります。もし、今後金利が上がらなければ、この差である1.4%をずっと払い続ける必要があるので支払い総額がかなり高くなります。現状8割近くが変動金利を選択するのは、固定金利の金利の高さにあります。

デメリット2:金利が下がった時に恩恵を受けることができない

変動金利の場合、金利が下がれば見直しで金利が低くなりますが、一度固定金利で契約すれば、金利が上がっても高いままになります。但し、現状金利はかなり低く抑えられているので、下がったとしても大きく変わることはないと予想されます。もちろん借り換えで変動にしたり、再度金利の安い固定金利も選択できます。

借入先の銀行の決め方

大きくカテゴリー分けするなら

・ネットバンク

・メガバンク

・地方銀行

・フラット35

絶対的なルールではないですが、ネットバンクとメガバンクは審査が厳しめ、地方銀行は比較的通りやすい、フラット35は住宅性能の制限があるが、審査はさらに通りやすいという特徴があります。

属性が良く、過去に金融トラブルがない方は金利が低いネットバンクやメガバンクが利用できる可能性が高いです。

借入額、金利の種類が決まれば、あとはどこで借りるかになりますが、全期間固定ならば、基本的にフラット35になりますし、それ以外なら、何に重きを置くかによって変わってきます。

今後金利が上がらない、もしくは固定金利の支払総額を上回るほどには上がらないと考えるならば、変動金利になりますが、ネットバンクやメガバンクの金利が低いです。5年固定、10年固定、20年固定のように、一定期間固定金利にする変動金利もあります。一般的にこのタイプは、固定期間中は、変動金利よりも高いが、全期間固定よりだいぶ低い金利で借りることができます。但し、固定期間終了後は、再度金利タイプを選ぶことになりますが、どの金利を選んでも、かなりの金利上昇が見込まれます。

選び方の目安としては、

とにかく支払い総額を安くしたい→ネットバンクもしくはメガバンク

団信を充実させたい→ネットバンク、メガバンク

初期費用を抑えたい→地方銀行

対面でのサービスを希望したい→地方銀行

早期で繰上返済したい→地方銀行

信用面で審査に受かるか心配→地方銀行もしくはフラット35

全期間固定金利にしたい→フラット35

ある程度の方針が決まれば、後は似た銀行で3行程度事前審査を出して、通ったところへ本審査を出すのが良いです。

例えばですが、35年ローンを変動金利で借りたい、できるだけ総額を安く抑えたいとおう理由でネット銀行2行、メガバンク1行に事前審査を出すという流れです。

選び方は検索サイトで、「変動金利 最安値」などと調べれば、金利ランキングなどが出てくるので、最安値の銀行で比較すれば良いです。金利以外に特典がつくことが多いので、比較すると良いです。例えば、イオン銀行なら、イオンでの買い物が5%OFFになるなど、普段イオンを利用する人にとっては大きい特典になります。

メガバンクも比較対象に入れた方が良いです。ネットバンクはほぼほぼ初期費用として、借入額の2.2%の事務手数料を取られますが、メガバンクでは、事務手数料が5万円などと定額の銀行もあります。例えば、4,000万円借りれば、88万円かかるので、5万円のほうが良いわけです。メガバンクは代わりに団体信用保険の料金として50万円かかる等の可能性もございますが。

また繰上げ返済を考えている方は、地方銀行もおすすめです。なぜならば、ネットバンクやメガバンクと比べ、初期費用が数万円の例が多いからです。団体信用保険も無料な例が多いので、金利は少し高くなるが、初期費用が安い例が多いです。

【体験談】

私は地方銀行から10年固定の変動金利を借りていますが、初期費用は2万円程度でした。金利は0.7%で、当時のネット銀行やメガバンクが0.5程度でしたので、0.2%の差がありました。

当初は三菱UFJ銀行を希望しており、借入額1900万円で事前審査を通し、10年固定変動金利0.5%、初期費用50万円の条件で借入が可能でした。。次に地方銀行で同様の事前審査をしたところ、10年固定変動金利が0.7%、初期費用2万円でした。両者の支払総額を比較したものが以下のとおりです。

【三菱東京UFJ】

固定期間10年経過後、変動金利に移行すると、必ず金利が上がるので、1%上がると仮定して計算しています。

毎月返済額:49,321円

10年経過時点の支払い総額:6,418,520円

総支払額:23,103,176円

例え金利0.5%で借りても、金利と借入手数料で400万円以上払うのが現実です。

【地方銀行】

毎月返済額:51,018円

10年経過時点の支払い総額:6,142,160円

総支払額:23,382,980円

毎月の支払額が1,697円地方銀行の方が高くなります。これが毎月続くので、35年間で712,740円の差となります。

ちなみに支払総額は三菱東京UFJの方が279,804円安くなります。やはり金利が低い分、初期費用が50万円近く高くても、最終的には逆転するので、支払総額を抑えたい方はネットバンクやメガバンクがお勧めです。

但し、10年経過時点で繰上返済を目論んでいればどうでしょうか。

10年経過時点の支払総額は、地方銀行の方が、276,360円も安いのです。つまり10年経過時点で残額を一括返済する、もしくは相当な額を繰上返済する予定がある人は初期費用を抑えることができる地方銀行は魅力的になります。

10年固定金利は、10年経過後に金利が一気に上がりますし、私のように中古住宅を購入する場合、住宅ローン控除は10年までしか使えないので、10年経過時点で返済するのは理にかなっているわけです。

もちろん、これは一例なので、変動でも10年固定でも35年かけて返済するつもりならメガバンクの方が有利です。その代わり審査は厳しめです。

ではもし私が同じ条件で、フラット35の全期間固定金利を借りたらどうなるでしょうか。

まずフラット35は、通常のローンと違い、住宅金融支援機構という機関が主体になった商品で、銀行が主体ではなく代理店のような位置づけになるため、他のローンと仕組みが全く異なります。

出所:https://jhffaq.jp/jhffaq/flat35/web/knowledge347.html

すごく分かりやすく言うと、銀行が35年住宅ローンをお客に貸せば、35年毎月一定額の収入が約束されます。この権利を債権という形にして住宅金融支援機構に売ります。この機構は各銀行から集めた多数の住宅ローン債権を担保に住宅金融支援機構債権を作り、この債権を投資家に売ります。

投資家は、万が一ローンを借りた人が支払いできなくなっても家を売却して資金を回収できると分かるので、比較的安全な債権と見なし、購入します。そして毎月の返済額から、銀行、住宅金融支援機構、信託銀行などが、利息分から手数料を取り、残りを投資家に還元します。投資家はこの債権を買うことで、利益が出ますし、各関係機関も手数料ビジネスになりますし、住宅ローンを借りる人も投資家とこれらの関係機関の連携のおかげで無事住宅ローンを借りることができます。しかしながら通常の住宅ローンと異なり、多数の参加機関がおり、手数料を沢山必要とするため、金利は高めになります。その代わりリスクを投資家に投げていることで、銀行は融資の審査基準を緩くしているところがあります。

話が長くなりましたが、35年固定金利1.8%を想定してシミュレーションしてみます。手数料は借入額の1%程度が多いため、20万円を想定します。

【フラット35 35年固定期間ローン】

毎月返済額:61,007円

総支払額:25,822,851円

10年固定の変動金利と比べるととてつもなく高くなりますね。地方銀行と比べても250万円程度は多めに払う計算になります。

この差額が金利を固定するための保険料だと考えれば、安いと思う方もいれば、高いと思う方もいると思います。

ちなみに、今は歴史的な低金利が続いているため、多くの方が知らないと思いますが、90年代初頭では、住宅ローン金利が4%以上の時期も普通にありました。そのころは、借入額と同じかそれ以上に金利を払うのが一般的でした。

現時点で変動金利は0.4%程度と歴史的に低い水準ですが、もし、今後急激に上昇し、5年後に4%になれば、

5年目までの毎月返済額:48,486円

5年以降の毎月支払額:78,514円

総支払額:31,674,303円

となり、金額が跳ね上がります。全期間固定と比べても総額が600万円程度上がります。

とにかく、変動金利は金利が急上昇したときのリスクがあるため、万が一金利が上がった時に預貯金がなく、支払が困難になる方は全期間固定金利が安心です。

まとめ

いかがでしょうか。借入額、金利の種類、借入先の金融機関が決まれば、住宅ローン手続きができるはずです。

他者の意見を鵜呑みにせず、無理のない返済額から算出する借入額にすること、低さだけで金利を選ばないこと、借入先の金融機関の選定等やるべきことが多数ですが、後悔のない住宅ローン選びをしてください。

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