住宅会社の営業担当者と会話をしていると、家の断熱性能とエアコン暖房の関係について勘違いされている方が多いので、その誤解について解明していきます。
誤った解釈は以下のとおりです。
家の断熱性能が低いので、室温が低くなる
↓
エアコン暖房を強めに運転する
↓
室温を高断熱住宅と同じにできる
↓
結論、電気代が多くかかるが、高断熱住宅と同じ室温で快適性を同じにでき、電気代が余分にかかる分も、高断熱化する建築費よりも30~50年の差額が安く済むので、低断熱住宅で十分。
さて、この話の誤っている点はどこにありますか。
答えは、
室温≠体感温度という点です。
室温以外にも風量や湿度など、様々な要因が体感温度に影響を与えますが、自宅で過ごすうえで、特に冬場に一番大きな影響を与えるのが、室温と壁、天井、床、窓から伝わる輻射熱です。つまり、室温と家の内側の表面温度ですね。
ざっくりしていますが、
体感温度=(室温+家内側の表面温度の平均)÷2
です。
つまり室温20度、表面温度の平均10度だと体感温度は15度で寒く感じます。
もし表面温度が18度あれば、例え室温が16度でも体感温度は17度になるので、室温20度の時よりも暖かく感じるわけです。
晴れた日の夜に室温が低くても暖かく感じるのは、日中太陽光で家全体が暖められて、表面温度が上がっているからです。
逆に曇りの日や雨の日の夜にエアコンで室温上げても寒く感じる原因は、表面温度が低いからです。
では、表面温度を上げるためにはどうすれば良いか。
日中は、外側からの太陽光で暖められて、温度が上がることも期待できますが、冬の日差しはそこまで強くないこと、そんな弱い日差しで暖められるほど、断熱性能が低ければ、夏にオーバーヒートすることなどを考えれば、日差しによる効果は大きくは期待できません。むしろ、室温が上昇することで、その熱を壁などが吸収し、温度が上昇することが一番でしょう。
もし、壁などの断熱性能が高ければ、上昇した温度を壁などが保持することができるので、表面温度を高いままでキープできます。もし、断熱性能が低ければ、伝わった熱がそのまま屋外に逃げていき、表面温度が低くなってしまいます。窓は特に断熱の弱点となるため、アルミのシングルガラスなら、熱を保持するどころか外気の冷気をもろに伝え、表面温度が5度などになってしまいます。
もちろん断熱等級5より6、6より7のほうが壁などの断熱性能が高くなるので、家の内側の表面温度は容易に高くできます。
なので、断熱等級7の家は、室温20度のとき、壁などの表面温度も20度近くまで上げることができるので、体感温度が20度となり快適になります。
もし断熱等級6に下がると、室温20度の時、表面温度が17度くらいとなり、体感温度が18.5度となり寒く感じるはずです。体感温度を20度にするためには、室温を23度まで上げる必要が出てくるので、室温が上がり、頭がほてったり、乾燥したりするデメリットが出てきます。
さらに断熱等級5になると、室温20度の時、表面温度は15度程度になってしまい、体感温度を20度にするためには室温を25度まで上げる必要が出てくるので、より頭がほてって、乾燥もひどくなります。
実際に同じ体感温度にするためには、断熱等級が下がれば下がるほどエアコンの設定温度を上げて、室温を上げる必要があるため、快適性は下がります。
エアコンによる室温上昇は、部屋の上のほうをより暖め、足元があまり暖まらないので、上下に寒暖差が生まれ、不快になります。エアコンが嫌いな方って、この寒暖差とエアコンによる乾燥と吹き出し口から出る強い温風が嫌なんだと思います。
体感温度が同じでも、室温が高ければ高いほど不快に感じますし、エアコンの光熱費も青天井です。
この問題は、断熱等級を上げて、家の表面温度を上げるしか解消する方法がありません。エアコンで室温を上げることで体感温度を上げていくことはできますが、快適性は損なわれます。
やはり、家の表面温度と室温がある程度近く、体感温度が20~22度程度が丁度良いのです。
春などの晴れ渡った日が心地よいのは、気温も20度程度、周りの表面温度も同じく20度程度で同じような温度で快適なためだと思います。
家の表面温度を恒常的に上げるには家の断熱性能を高めるか、相当エアコンの設定温度を上げて室温高めの時間を継続して壁などを暖めるしか方法ないんですね。
しかし、エアコン強すぎると、室温上がりすぎて、乾燥しすぎて、部屋の上下の温度差も大きくなって、暖かいけど不快な住環境になります。しかも、電気代がものすごくかかりますし、24時間暖房しないと恒常的に壁などを暖かくできません。
結局50年暮らす家を快適にするには、新築時に断熱等級を高くしておくのが一番良いことに気づきます。
断熱等級の違いによる家の冷えは、エアコン暖房で簡単に解決することは難しく、快適性を求めるとエアコン暖房の電気代が余計にかかるだけで、快適性は追求できないことを知っておきましょう。
コメント