本記事では、決してUa値やC値が無意味とは言っていません。もちろん、これらの数値は住宅の断熱性能や気密性能を測る上で非常に重要な指標になります。
問題なのは、Ua値やC値が高ければ、高性能な家となり、快適な家になる、光熱費が安くできるなどと安直に考えてしまうことが危険ということです。
最近はSNSやブログ、Youtubeなどで次々に専門的な情報が出てきており、一般の素人の方が知識をつけております。
どの分野においてもそうなのですが、素人が半端な知識をつけた状態が一番危険だと思います。私自身過去に大失敗をした経験があるからこそ語れるのですが。
住宅の快適性は、断熱性能や気密性能だけでは決まらないです。他に大きな影響を与えるものとして、日射、床や壁などの素材、空調計画、通風などがあります。順番に解説していきましょう。
まず、極端な例として、断熱性能や気密性能だけに拘り、他で失敗した住宅を考えてみましょう。
一般的に、住宅の断熱・気密の弱点は開口部、つまり多くの場合は窓になります。
夏の暑さの7割近く、冬の寒さの5割近くは窓が原因と言われるくらい、窓が住宅の快適性に影響を与えていると言われています。そして単純に、その弱点を排除しようと、窓の数や大きさを削減すれば容易にUa値やC値を改善して、数値上は断熱性能も気密性能も上げることができます。
但し、このことにより、冬場は晴れていても、お日様が室内にほとんど入ってこなくなるため、室温が上昇しません。勘違いしている方が一定数いますが、断熱性能が高いというのは、室内にある熱を保持する力が強いだけで、自ら発熱するわけではないのです。つまり、熱源である日射が入ってこなければ、エアコンなどで暖房しなければならないのです。さらに窓が少ないと、春や秋の涼しい季節に通風がうまくできず、室内に熱がこもり、暑くなります。もちろん、これを解消するには冷房をつけるしかなくなり、折角の季節を感じて気持ち良い外気を取り入れることができる季節も人工的な冷房の風で過ごすことになり不快になります。
さらに床や壁などが化学製品ばかりの素材になると、室内は化学物質で充満され、アレルギーなどの原因にもなりますし、気持ちよくないです。さらに床材などは無垢床と違い肌触りも良くなく、この点でも不快になります。
折角断熱性能を高くしても空調計画に失敗すると室内は快適にはなりません。エアコンは製品や容量、設置場所により発揮できる力に大きな違いが生じます。1の電気で生み出す熱のことをAPFといいますが、上手に使えば6くらいになるところが、下手な使い方をすると2くらいになってしまいます。
つまり、上手にエアコンを利用すれば、同じように空調しても3分の1の電気代になるということです。住宅性能を3倍にしても空調計画で失敗すれば、電気代は変わらないという結果にもなりかねません。
Ua値やC値などの数値を追い求めるあまり、数値を上げるための家づくりになってしまい、実際に暮らしてみると、エアコンによる温度管理は容易にでき、光熱費も抑えられるが、どこか快適ではない家が完成し、後悔するという例は結構多いようです。
それでは、快適性に影響を及ぼす要因について具体的に見てみましょう。
1.日射
冬の日射による室温上昇は侮れないです。我が家では、リビングに大きな掃き出し窓、リビングに隣接する和室にも大きな掃き出し窓がありますが、冬場日差しが入ることにより、無暖房でも快適に過ごせるくらいに室温は上昇します。
例えば、外気温5度、朝方無暖房で室温が15度程度の時、日射がなければ、すぐに暖房を入れることになりますが、日射により室温は1時間毎に1~2度程度上昇をして、午前9時頃に15度程度だった室温は、午後3時頃には23度程度まで上昇します。また日射により室温上昇だけでなく、日差しが直接当たる壁や床などが暖められている効果により、室内が冷えにくくなります。
これは実際に経験してみないと比較が難しいと思いますが、日射がない日もエアコンにより室温を23度程度まで上昇されるのですが、同じ23度でも体感は明らかに日射がある日の23度の方が快適です。これは、人間の体感温度は、室温だけでなく、壁や床などの表面温度にも影響していることが原因です。さらに床などが日射で暖められた状態で室温が23度になると、その後エアコンなしでも室温が下がりにくいのです。
我が家の場合、晴れた冬の日は、日没後も室温はある程度キープされ、午後9時時点でも18度くらいある日が多いです。つまり、多少寒くてもほぼ1日中無暖房で過ごせるということです。Ua値がどんなに優れていても日射が見込めない家の場合、ほぼ1日中暖房をつけることになるので、快適性も光熱費も劣ることは明白です。
2.床や壁などの素材
床や壁の素材は、Ua値などの断熱性能に影響を与えないことになっていますが、体感する快適性にはかなり影響を与えています。
例えば、床材がシートフローリングと無垢床では肌触りも体感温度も雲泥の差となります。シートフローリングは、冬場に室温上げても、触れた時の体感は少しヒヤッとします。逆に無垢床は、例え室温が低めでも触れた時に自然な暖かさがありますので、比べると全く違います。また夏場にシートフローリングは水気を一切吸収しないので、蒸れた足で歩くと、ペチャペチャと床に足がくっつきかなり不快な気分になります。無垢材だとさらっとした体感なので気持ちよく歩くことができます。
同じ予算なら断熱を追求するよりも床材に拘った方が快適性を向上できる可能性も高いです。 また、壁紙が安物のクロスだと調湿作用や消臭作用も一切ないですが、珪藻土などであれば室内の空気がだいぶ変わります。このような効果もUa値などでは測れないのです。
3.通風
次に通風の効果ですが、春や秋の時期に絶大な効果を発揮します。
いわゆるエアコン不要の時期ですが、窓を閉め切っていると、少し蒸し暑くなりますので、基本は窓を開けて外気を取り入れます。特に朝方や夕方の涼しい時間帯に、風通しが良いと、室内の汚れて蒸し暑い空気を乾いた涼しい空気に一気に交換してくれます。
もし、風通しが悪く、窓も少なくて小さいと十分な通風ができず、室内がずっと暑いままになります。特に断熱性能や気密性能が高いと、室温をキープする傾向にありますし、ほっておいても、人がいるだけで、家電を動かすだけで発熱するので、上手に換気や通風をしないと室温は上がる一方です。 高性能住宅は、換気計画がしっかりしているので、通風は不要という意見もあります。確かにおっしゃるとおりですが、高性能住宅の換気システムはほぼ間違いなく第一種換気の熱交換が付属したものになります。つまり十分に換気はできても、熱を保持したまま換気するので室温は下がらないんですね。この件については、住宅会社も理解しており、高性能住宅では、春や秋の時期も冷房を使うことを推奨する会社もあります。確かに冷房を使えば解決するかもしれませんが、余分な電気代もかかりますし、本来心地よい室温で暮らせる時期まで機械的な冷房で過ごすのは、快適性を下げると私は思います。
4.空調計画
最後に空調計画です。どんなに高断熱住宅でも、エアコンなどの空調がなければ、夏は涼しくできないですし、冬も暖かくできないです。特に断熱性能だけを追求して日射や通風などの自然エネルギーを利用したパッシブ設計になっていないのならば、なおのこと空調に頼らなければ快適な生活を手に入れることは不可能です。
夏と冬の良くある失敗を紹介します。
まず、夏場ですが、高断熱住宅であるにも関わらず、容量の大きいエアコンを設置するケースです。住宅会社が大は小を兼ねるという発想のもと、大きめのエアコンを設置すると悲惨な状況になる可能性があります。冷房運転というのは、室温が設定温度に達すると、運転を停止するか送風運転に切り替わるようになります。仮に高断熱住宅で大きなエアコンを運転すると、短時間に急速に室温を下げ、すぐに送風運転に切り替わってしまいます。この運転方法だと室温は下がるが湿度がほとんど下がりません。実は日本の夏の暑さの原因って室温以上に湿度なんです。いかに湿度対策をするかが重要になってきます。ここでさらに問題になるのは、エアコンつけても湿度が下がらないからムシムシして不快だと思い、さらに設定温度を下げることです。このことにより確かに室温は下がりますが、先ほどと同様にエアコンが一気に室温を下げるために湿度が下がらないのに室温だけ下がり、肌寒いけどじめじめして気持ち悪い状態になります。
これは私が某大手の高断熱を売りにする工務店のモデルハウスに見学に行った時に体感した状況です。このモデルハウスでは、エアコンがフル稼働しており、室温は26度になっていましたが、湿度がなんど72%になっていました。確かに外と比べると涼しいのですが、湿度が高いと不快なんですよね。例えるなら、6月の梅雨時です。気温が26度程度と低いのですが、湿度が高いので、不快なんですよね。5月の晴れ渡った30度の日より、6月の梅雨時の気温26度の日の方が不快だと言えば納得いただけると思います。
湿度を下げるためには、長時間冷房運転をして、徐々に室温を下げながら、熱交換器に水滴が付着して、空気中の湿気を熱交換器が水滴として奪い、湿度を下げていく必要がありますが、高断熱住宅では、すぐに室温が下がるので、これができないのです。対策としては、広範囲にエアコンの風が流れる位置にエアコンを設置して室温を下げる時間を長くすること、エアコン容量を適切な大きさか少し小さめにして、時間をかけて室温を下げるようにして、徐々に湿度も下げる運転にするしかないです。
我が家は、Ua値が0.5程度で、そこそこの断熱性能ですが、空調計画に気を付けているため、夏場は室温と湿度を適切に下げています。おおよそ室温26度、湿度50%を維持しているため、かなり快適な空間にできています。
次に冬場ですが、最大の問題は、暖かい空気が上に、冷たい空気が下に行くという性質を理解しないまま、エアコンを設置することです。特に高断熱住宅だと開放感を出すために、吹き抜けを設置する住宅も多くなります。吹き抜けがあるにも関わらず、吹き抜けのど真ん中にエアコンを設置すると、エアコンの暖かい風はすべてが上空に上り、誰もいない吹き抜けのてっぺんだけが暖かくなり、下は寒いままです。そして2階につながる階段から2階の冷たい風が下りてくるコールドドラフト現象に悩まされることになります。この状態でも高断熱住宅で長時間エアコンをつければ家じゅう暖かくなります。結果快適な空間になりますが、余分な暖房費がかかります。結局、高断熱住宅ならば暖房費抑えられると思いながら空調計画を誤ると、余分な暖房費がかかり、光熱費はたいして削減できなかったという例も結構あります。実は、ある程度の断熱性能でも、空調計画がしっかりできていれば、半局所暖房で快適に過ごせます。確かに常に全館暖房をすれば快適であることは間違いないですが、ほとんど使っていない2階の居室を暖房することで快適性にプラスに寄与することはほぼないです。特に子供が小さいうちで、夫婦共働きのご家庭は、ほぼ生活をリビングと寝室のみで過ごすご家庭が多いです。つまり、リビングと寝室を常に快適にできれば効率よく暖房できます。結果的に高断熱の全館暖房とそこそこの断熱性能で局所暖房することで、快適性はほとんど一緒でも局所暖房の方が圧倒的に暖房費を安く済ませることもできます。
空調計画は、追加料金のかかるものでないですが、快適性や光熱費に与える影響は絶大です。
・さいごに
情報が溢れる現代において、数値などの比較で目に見えて分かりやすいものが目立つ傾向があります。Ua値やC値などの性能値はその最たるもので、販売側もこのような数値で優位性をアピールすることで販売数を増やすことができます。家づくりを考える方は、これらの目に見える数値ももちろん大切なのですが、盲目的に数値を信じるだけでなく、体感できる無垢床などの素材に拘ったり、実際に住宅見学をすることで日射や通風の大切さを体感することが重要です。
さらに空調計画により快適性も光熱費も大幅に変わることを理解したうえでエアコン等の空調機器の設置を慎重に計画することが重要です。


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