「住宅ローン金利が低かった時代に家を買った人は得だった」
これはよく言われる話です。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
実は、住宅購入の「お得度」を考えるには、金利だけを見るのでは不十分です。
なぜなら、住宅価格そのものも大きく変化しているからです。
たとえば、2020年の住宅ローン変動金利は非常に低い水準でした。
ところが、2020年には住宅価格がすでに上昇していました。
一方、2012年ごろは住宅価格がまだ低く、金利も十分に低い水準でした。
そこで今回は、
「住宅価格」と「住宅ローン金利」を同時に考えたら、結局いつ家を買った人が一番得だったのか?
を数字で検証します。
結論から言うと、今回の試算では、
最も有利だった時期は2012~2016年ごろ。
なかでも変動金利なら「2012年ごろ・0.875%前後」、固定金利なら「2016年・0.9%前後」が非常に強い結果になりました。
そして意外なのは、
「金利が最も低かった2020年が最強」ではなかった
ことです。
住宅価格の上昇が、それ以上に大きかったからです。
1.まず住宅価格はどれだけ上がったのか?
今回使うのは、国土交通省の「不動産価格指数」です。
この指数は、全国の実際の不動産取引価格をもとに算出され、2010年平均を100として住宅価格の動きを示しています。
今回の検証では、全国の「住宅総合」を使います。
2025年12月の全国住宅総合指数は148.0。
つまり、2010年平均と比較すると、2025年には住宅価格水準が約48%上昇していることになります。
全国住宅総合指数の推移
| 年 | 住宅総合指数 | 2025年=4,000万円とした場合の推定価格 |
|---|---|---|
| 2008年 | 101.0 | 約2,730万円 |
| 2009年 | 98.6 | 約2,665万円 |
| 2010年 | 101.0 | 約2,730万円 |
| 2011年 | 99.6 | 約2,692万円 |
| 2012年 | 99.4 | 約2,686万円 |
| 2013年 | 102.2 | 約2,762万円 |
| 2014年 | 103.7 | 約2,803万円 |
| 2015年 | 104.5 | 約2,824万円 |
| 2016年 | 106.3 | 約2,873万円 |
| 2017年 | 108.8 | 約2,941万円 |
| 2018年 | 110.9 | 約2,997万円 |
| 2019年 | 111.7 | 約3,019万円 |
| 2020年 | 117.5 | 約3,176万円 |
| 2021年 | 124.8 | 約3,373万円 |
| 2022年 | 134.6 | 約3,638万円 |
| 2023年 | 137.1 | 約3,705万円 |
| 2024年 | 約140 | 約3,784万円 |
| 2025年 | 148.0 | 4,000万円 |
2015年12月の住宅総合指数は104.5、2020年12月は117.5、2025年12月は148.0です。
つまり、
2015年に約2,824万円だったと仮定した住宅が、指数の上昇率だけで考えると2025年には4,000万円相当
になった計算です。
これはかなり大きな差です。
2.住宅ローン金利はどうだったのか?
次に住宅ローンです。
今回の比較では、昨日までのシミュレーションと同じ考え方で、
- 35年返済
- 元利均等返済
- 頭金なし
- 住宅価格=借入額
- ボーナス返済なし
- 手数料・税金・保険・修繕費などは除外
という条件で比較します。
変動金利については、当時の代表的な優遇後金利の水準を使います。
例えば2012年には、主要銀行の変動金利が0.875%前後まで低下していました。2012年時点では、基準金利2.475%に対して優遇後0.875%程度という水準が確認できます。
2015年には0.658%前後、2020年には0.527%前後という低水準も確認できます。
つまり、住宅ローン金利だけを見ると、
2015~2020年のほうが2012年より有利
に見えます。
ところが、住宅価格を一緒に考えると話が変わります。
3.「住宅価格+住宅ローン利息」で比較してみる
ここが今回の本題です。
2025年に4,000万円の住宅を買うケースを基準にします。
そして、
「もし同じ価格指数の住宅を2012年、2015年、2020年に買っていたら、住宅価格はいくらだったのか?」
を逆算します。
さらに、その金額を35年ローンで借りた場合の利息を計算します。
2012年に買った場合
住宅価格指数は99.4。
2025年の148.0に対して、
4,000万円 × 99.4 ÷ 148.0 ≒ 2,686万円
となります。
これを変動金利0.875%、35年で借りると、
- 住宅価格:約2,686万円
- 月返済:約7.43万円
- 総利息:約433万円
- 住宅価格+利息:約3,120万円
となります。
2015年に買った場合
住宅価格は、
4,000万円 × 104.5 ÷ 148.0 ≒ 2,824万円
です。
変動金利0.658%なら、
- 住宅価格:約2,824万円
- 月返済:約7.53万円
- 総利息:約338万円
- 住宅価格+利息:約3,163万円
となります。
2020年に買った場合
住宅価格は、
4,000万円 × 117.5 ÷ 148.0 ≒ 3,176万円
です。
変動金利0.527%なら、
- 住宅価格:約3,176万円
- 月返済:約8.28万円
- 総利息:約303万円
- 住宅価格+利息:約3,478万円
となります。
4.驚きの結果!2020年は「金利最安」なのに負ける
比較するとこうなります。
| 購入年 | 推定住宅価格 | 想定変動金利 | 35年間の利息 | 住宅価格+利息 |
|---|---|---|---|---|
| 2012年 | 2,686万円 | 0.875% | 433万円 | 3,120万円 |
| 2015年 | 2,824万円 | 0.658% | 338万円 | 3,163万円 |
| 2020年 | 3,176万円 | 0.527% | 303万円 | 3,478万円 |
| 2025年 | 4,000万円 | 1.00%※ | 742万円 | 4,742万円 |
※2025年の1.00%は比較用の仮定値。実際の優遇後変動金利は金融機関によって異なります。
ここから非常に重要なことが分かります。
金利が100万円安くなっても、住宅価格が300万円上がれば意味がない
2012年と2020年を比較すると、
2020年のほうが住宅ローン金利は約0.35ポイント低い
にもかかわらず、
住宅価格は約490万円も高くなっています。
その結果、
住宅価格+利息では2012年のほうが約358万円も安い
という結果になりました。
5.では、2008年はもっと得だったのか?
ここも非常に面白いところです。
2008~2010年は住宅価格がかなり低い時代でした。
しかし、住宅ローン金利は2010年代半ばほど低くありませんでした。
つまり、
「住宅価格は安いけど金利が高い」
という時代です。
これは住宅購入において非常に重要です。
住宅価格だけなら、
「2009年ごろに買えば安かった!」
となります。
しかし住宅ローンを含めると、
住宅価格が安いことと、住宅購入が最も安いことは同じではない
のです。
住宅ローン金利が高いと、35年間で数百万円単位の利息差が発生します。
6.変動金利で最も有利だったのは何年?
今回の条件で計算すると、非常に面白い結果になります。
変動金利の「黄金期」
| 時期 | 住宅価格 | 金利水準 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 2008~2010年 | 非常に安い | やや高い | ○ |
| 2011~2013年 | 非常に安い | 0.8%台中心 | ◎ |
| 2014~2016年 | 安い | 0.6~0.8%台 | ◎ |
| 2017~2019年 | やや上昇 | 非常に低い | ○ |
| 2020年 | 高くなった | 非常に低い | ○ |
| 2021年以降 | 急上昇 | 低金利 | △ |
| 2025~2026年 | 非常に高い | 金利上昇 | △~× |
そして今回の単純化したモデルでは、
2012年・変動0.875%前後
が最も低い「住宅価格+35年ローン利息」になりました。
ただし、2012年と2015年の差は約43万円しかありません。
つまり、
「2012年が圧倒的に最強」ではありません。
むしろ、
2012~2015年あたりが、住宅価格と金利の両方が非常に良かった黄金期
と考えるほうが正確です。
7.固定金利なら「2016年」が異常に強かった
固定金利ではさらに面白い結果になります。
2016年は日銀のマイナス金利政策の影響もあり、フラット35の金利が急低下しました。
2016年8月には、返済期間21~35年のフラット35が0.90%まで低下しています。2016年1月には1.54%、2月1.48%、3月1.25%、8月0.90%まで下がりました。
これは現在から見ると驚異的な水準です。
2016年の住宅価格指数は約106.3。
2025年の4,000万円住宅を基準にすると、
約2,873万円
です。
これを0.90%の固定金利で35年間借りると、
- 住宅価格:約2,873万円
- 総利息:約477万円
- 住宅価格+利息:約3,350万円
となります。
つまり、
2016年は「住宅価格がまだ安い」+「固定金利が史上最低水準」
という、非常に珍しい条件が重なっていたわけです。
8.固定金利の黄金期は2016年
固定金利で見ると、
2016年は住宅購入にとって歴史的にかなり有利なタイミング
だったと言えます。
特に2016年8月のフラット35は0.90%。
現在の2026年8月のフラット35は、返済期間21~35年の金利が3.29%です。
単純に金利だけ比較すると、
0.90% → 3.29%
です。
実に2.39ポイントもの差があります。
同じ3,000万円を35年間借りた場合、金利の違いによる総返済額の差は極めて大きくなります。
9.「金利が一番低かった年=一番得」ではない
ここが今回の検証で最も重要なポイントです。
多くの人は、
「住宅ローン金利が一番低い年に買うのが正解」
と考えます。
しかし、それは半分しか正しくありません。
住宅購入には、
①住宅価格
と
②住宅ローン金利
の2つがあります。
この2つを合計して考える必要があります。
例えば、
2012年
住宅価格:約2,686万円
変動金利:約0.875%
2020年
住宅価格:約3,176万円
変動金利:約0.527%
金利だけなら2020年が圧勝です。
しかし住宅価格は、
約490万円も高い。
そのため、利息が約130万円安くなっても、住宅価格の上昇分を取り戻せません。
結果として、
2012年のほうが約358万円安い
という結果になりました。
10.実は2015年前後が「最もバランスが良かった」
では結局、どの年が一番おすすめだったのでしょうか。
単純な数学上の最安値だけなら、
2012年・変動0.875%前後
です。
しかし、実際の住宅ローンでは金利が固定されたままではありません。
変動金利は将来上昇する可能性があります。
そのため、
「最初の金利が安かった」というだけで2012年を絶対的な王者にするのは危険です。
2012年は住宅価格が非常に安かった一方、2015年になると、
- 住宅価格はまだ十分安い
- 変動金利は約0.65%
- 2016年には固定金利も急低下
- 住宅価格が本格的に上昇する前
という条件が揃っています。
したがって、
住宅価格と金利のバランスという意味では、2014~2016年が歴史的な「黄金ゾーン」だった
と評価するのが最も妥当でしょう。
11.2020年購入者は本当に損だったのか?
ここは誤解しないでください。
2020年購入者が「損だった」という意味ではありません。
2020年は住宅ローン金利が非常に低く、フラット35でも2020年12月は1.31%でした。
変動金利も極めて低い水準でした。
問題は、
住宅価格の上昇スピードが金利低下のメリットを上回り始めていた
ことです。
2015年から2020年までの5年間で、住宅総合指数は約104.5から117.5へ上昇。
さらに2020年以降は、
117.5 → 124.8 → 134.6 → 137.1 → 約140 → 148
と上昇しています。
つまり、
2020年は「低金利の最後の大チャンス」に近かったものの、住宅価格はすでに上昇局面に入っていた
と見ることができます。
12.そして2021年以降、状況が大きく変わった
2021年以降の住宅購入環境は、それ以前とは明らかに違います。
住宅価格指数は、
2020年:約117.5
から
2025年:148.0
へ上昇しました。
約5年間で、
約26%上昇
しています。
一方、住宅ローン金利については2024年以降、上昇圧力が強まりました。
そして2026年8月にはフラット35の最頻金利が3.29%まで上昇しています。
つまり現在は、
住宅価格が高い
+
金利も過去の超低金利時代より高い
という、過去の黄金期とは正反対の環境です。
13.では2026年に家を買うのは「最悪」なのか?
ここも単純ではありません。
現在の住宅価格が高いからといって、
「絶対に買ってはいけない」
とは言えません。
住宅価格は地域差が非常に大きいからです。
国土交通省の指数でも、2025年12月の全国住宅総合は148.0ですが、地域別では大きな差があります。例えば中部地方は114.5、中国地方は122.1、関東地方は156.0、東京都は182.1でした。
つまり、
全国平均では高くても、地方では住宅価格の上昇が限定的な地域も存在する
わけです。
ここは非常に重要です。
14.「住宅価格が高い東京」と「価格上昇が限定的な地方」を同じに考えてはいけない
例えば東京都では、2025年12月の住宅総合指数が182.1。
一方、中国地方は122.1。
同じ日本でも、
住宅価格の上昇率が全く違います。
したがって、
「全国の住宅価格が上がったから今は買うべきではない」
という判断も正しくありません。
むしろ地方では、
住宅価格がそれほど上がっていないのに、住宅ローン金利だけが上がる
という状況が起こり得ます。
これは購入者にとって非常に重要な問題です。
15.今回の検証から分かった「住宅購入の黄金期」
今回のデータを整理すると、次のようになります。
| 時期 | 住宅価格 | 金利 | 住宅購入環境 |
|---|---|---|---|
| 2008~2010 | ◎非常に安い | △やや高い | ○ |
| 2011~2013 | ◎非常に安い | ◎低い | ◎◎ |
| 2014~2015 | ◎安い | ◎非常に低い | ◎◎ |
| 2016 | ○安い | ◎史上最低級 | ◎◎◎ |
| 2017~2019 | ○ | ◎ | ◎ |
| 2020 | △上昇 | ◎非常に低い | ◎ |
| 2021~2022 | △~× | ◎ | ○~△ |
| 2023~2025 | ×高い | △上昇 | △ |
| 2026 | ×高い | ×上昇 | △~× |
16.最終結論
今回の「住宅価格+住宅ローン利息」という視点から見ると、非常に興味深い結果になりました。
変動金利なら
2012年ごろ・0.875%前後
が今回の単純モデルでは最も低い購入総コストになりました。
住宅価格が約2,686万円と非常に安く、金利も0.875%程度まで下がっていたためです。
ただし2015年との差は約43万円。
したがって、
「2012年だけが圧倒的に得だった」というより、2012~2015年が黄金期
と考えるべきです。
固定金利なら
2016年・0.9%前後
が非常に強力でした。
2016年8月にはフラット35が0.90%まで低下。
しかも住宅価格指数はまだ106.3程度。
つまり、
「住宅価格がまだ安い時期」+「固定金利が史上最低級」
という奇跡的な組み合わせでした。
17.では、今から住宅を買う人はどう考えるべきか?
今回の検証から、これから住宅を購入する人に最も伝えたいことがあります。
それは、
「金利が下がるまで待つ」だけでも、「住宅価格が下がるまで待つ」だけでも不十分
ということです。
見るべきなのは、
住宅価格 × 金利
の組み合わせです。
住宅価格が10%下がっても金利が1%上がれば、住宅ローンの総支払額は大きく変わります。
逆に金利が0.5%下がっても、住宅価格が500万円上昇すれば、そのメリットは簡単に吹き飛びます。
18.住宅購入で本当に見るべき数字
これから住宅を買うなら、単純に、
「今の住宅価格は高いか?」
「今の金利は高いか?」
だけを見るのではなく、
①住宅価格
②借入金額
③住宅ローン金利
④35年間の総利息
⑤住宅価格+総利息
⑥将来の住宅価値
までセットで考えるべきです。
特に中古住宅の場合、
「新築価格が高騰しているから中古も高い」
とは限りません。
地域によっては、新築と中古の価格差が非常に大きくなっています。
まとめ
今回の検証を一言でまとめるなら、
住宅購入で最も得だったのは「金利が一番低かった時代」ではない。住宅価格がまだ安いうちに、低金利を組み合わせた時代だった。
そして歴史的に見ると、
🥇 変動金利
2012年前後・0.875%前後
🥇 固定金利
2016年・0.9%前後
が非常に強い結果となりました。
ただし、両者に共通しているのは、
「住宅価格がまだ上がり切っていなかった」
ことです。
2020年は変動金利がさらに低くなりましたが、住宅価格がすでに上昇。
2021年以降は住宅価格がさらに上昇し、2025年には全国住宅総合指数が148.0まで上昇しました。
そして2026年8月現在、フラット35の最頻金利は3.29%。
住宅購入環境を歴史的に振り返ると、
「2012~2016年ごろは、住宅価格と金利の両方が非常に恵まれていた黄金期だった」
という結論になります。
逆に言えば、これから住宅を買う人に必要なのは、
「昔は安かった」と嘆くことではなく、現在の住宅価格と現在の金利を組み合わせたときに、本当に割高なのかを数字で判断すること
です。
住宅ローンは「金利」だけを見ると判断を誤ります。
家そのものの価格と、35年間の利息を合算して初めて、本当の住宅購入価格が見えてきます。
注記
本試算は「住宅価格指数の変化を実際の購入価格に比例させる」というモデル計算です。不動産価格指数は全国の取引価格の動きを示す指数であり、個別住宅の実売価格を表すものではありません。また、実際の住宅ローンでは金融機関・借入時期・頭金・団信・優遇幅・金利上昇時期によって結果が変わります。
なお、2026年8月現在、国土交通省の不動産価格指数はシステム障害により2026年4月以降の公表が延期されているため、今回の住宅価格比較では公表済みの2025年12月データを最新値として使用しています。


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