2020年、新型コロナウイルスが世界中に広がったころ、
「これから大不況になるのでは?」
「住宅価格はこれから下がるのでは?」
「今は家を買わず、賃貸で待ったほうがいい」
――そんな声が数多く聞かれました。
そこで、あえて住宅購入を先送りして賃貸で暮らし続けた人も少なくありません。
ところが、その後の住宅市場は大きく変わりました。
建築資材価格や人件費、土地価格などが上昇し、住宅価格は上昇。
さらに住宅ローン金利も上昇しました。
2026年8月現在、フラット35の21~35年・融資率9割以下の最頻金利は年3.29%です。
では、
「2020年に固定金利で家を買った人」
と、
「住宅価格が下がると考えて2026年まで賃貸で待ち、2026年に固定金利で家を買った人」
では、30年間の住宅コストにどれほどの差が生まれるのでしょうか?
さらに、住宅ローンの返済額が安かった2020年購入者が、その差額を年4%で投資したらどうなるのでしょうか?
今回は、住宅価格・住宅ローン金利・家賃・投資まで含めて徹底的にシミュレーションします。
結論:2020年に家を買った人が圧倒的に有利だった
今回の条件では、2020年に住宅を購入したAさんのほうが大幅に有利という結果になりました。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 購入時期 | 2020年 | 2026年 |
| 2020年の住宅価格 | 3,500万円 | ― |
| 2026年の住宅価格 | ― | 約4,261万円 |
| 固定金利 | 1.31% | 3.29% |
| 借入期間 | 35年 | 35年 |
| 月々のローン返済 | 約10.39万円 | 約17.10万円 |
| 月々の返済差 | ― | 約6.70万円高い |
| 35年間の総返済額 | 約4,365万円 | 約7,180万円 |
| 2020~2026年の家賃 | ― | 約576万円 |
| 2026年以降の返済差額を投資 | Aさん | ― |
| 投資利回り | 年4% | ― |
| 30年後の投資資産 | 約4,651万円 | ― |
特に重要なのが最後の数字です。
AさんはBさんより住宅ローンの返済額が毎月約6.7万円少ないため、その差額を投資に回せます。
年4%で30年間運用すると、
約4,651万円
になります。
2020年は「家を買わずに待つべき時代」だったのか?
まず、2020年当時の状況を振り返ってみましょう。
新型コロナウイルスによって経済活動が急激に落ち込み、
「不況になる」
「失業者が増える」
「住宅需要も減る」
「不動産価格も下がる」
という見方が広がりました。
そのため、
「今は家を買わず、住宅価格が下落するまで待とう」
と考えるのは、決して不合理な判断ではありませんでした。
しかし、実際の結果は大きく異なりました。
住宅価格は上昇し、さらに建築コストも上昇。
そして2026年には住宅ローン金利まで大きく上昇しています。
今回のシミュレーション条件
今回は、2020年に3,500万円だった住宅と同等の住宅を購入すると仮定します。
比較するのは次の2人です。
Aさん
2020年に住宅を購入。
Bさん
2020年には購入せず、2026年まで賃貸で暮らし、2026年8月に住宅を購入。
そして、両者とも同等の住宅に30年間住むものとします。
シミュレーション条件
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 2020年の住宅価格 | 3,500万円 |
| 2026年の住宅価格 | 約4,261万円 |
| Aさんの固定金利 | 1.31% |
| Bさんの固定金利 | 3.29% |
| ローン期間 | 35年 |
| 頭金 | 0円 |
| ボーナス返済 | なし |
| Bさんの家賃 | 月8万円 |
| 2020~2026年の賃貸期間 | 6年間 |
| 投資利回り | 年4% |
| 投資期間 | 30年間 |
2026年8月のフラット35では、21~35年の融資率9割以下の最頻金利が年3.29%です。フラット35は全期間固定金利型の住宅ローンで、借入時に返済終了までの金利と返済額が確定します。
※実際には住宅性能や家族構成などによって金利引下げ制度を利用できる場合があります。今回は比較を単純化するため、基準となる3.29%を使用しています。
2020年から2026年までに住宅価格はどれだけ上がった?
今回の比較では、2020年の住宅価格を3,500万円とします。
一方、2026年の住宅価格については、前回の記事で使用した全国の新築戸建て価格の推移をもとに、
2020年:約3,450万円
↓
2025年:約4,200万円
という上昇率を3,500万円の住宅に当てはめます。
すると、
3,500万円 → 約4,261万円
となります。
つまり、
約761万円
も住宅価格が上昇したと仮定します。
Aさんは2020年に3,500万円で購入
Aさんは2020年に3,500万円を借りて住宅を購入します。
固定金利は1.31%。
35年ローンで計算すると、
月々の返済額
約10万3,937円
です。
35年間の総返済額は、
約4,365万円
となります。
つまり、
- 借入元金:約3,500万円
- 利息:約865万円
です。
Bさんは2026年まで待って購入
一方、Bさんは2020年には購入しません。
2026年まで6年間、月8万円の家賃を払って暮らします。
そして2026年、同等の住宅を約4,261万円で購入します。
さらに固定金利は3.29%。
35年ローンで計算すると、
月々の返済額
約17万960円
です。
Aさんとの差は、
17万960円
-
10万3,937円
=
約6万7,000円
です。
つまりBさんは2026年以降、
Aさんより毎月約6.7万円多く住宅ローンを支払う
ことになります。
Aさんが毎月6.7万円を年4%で投資すると?
2026年から30年間、
毎月約6.7万円を投資。
年4%で複利運用した場合、
投資元本
約6.7万円 × 360か月
=
約2,412万円
です。
ところが、複利運用すると、
約4,651万円
になります。
つまり、
約2,412万円を積み立てて、約4,651万円になる
計算です。
運用益は、
約2,239万円
です。
年7%と比べるとどうなる?
ここは非常に重要です。
前回は年7%で計算しましたが、年4%にするとかなり現実的なシミュレーションになります。
| 想定利回り | 30年後の投資資産 |
|---|---|
| 0% | 約2,412万円 |
| 2% | 約3,301万円 |
| 3% | 約3,884万円 |
| 4% | 約4,651万円 |
| 5% | 約5,582万円 |
| 6% | 約6,708万円 |
| 7% | 約8,176万円 |
今回の記事では、
年4%
を採用します。
年7%と比べるとかなり控えめですが、それでも30年間という長期間では大きな差になります。
Bさんは2020~2026年に576万円の家賃を払う
Bさんは住宅購入を6年間待ちます。
家賃は月8万円。
すると、
8万円 × 72か月
=
576万円
です。
つまりBさんは住宅を購入するまでに、
約576万円を家賃として支払います。
もちろん、家賃には「その6年間住めた」という価値があります。
したがって、576万円をすべて「損失」と考えることはできません。
しかし、住宅を購入するという目的だけから見れば、購入資金にはなりません。
さらにBさんは住宅価格が約761万円上昇した状態で購入
2020年に3,500万円だった住宅が、
2026年には約4,261万円。
つまり、
約761万円高くなっています。
Bさんは、
「住宅価格が下がるまで待つ」
つもりだったのに、
実際には約761万円高い価格で購入することになりました。
しかも金利まで上昇した
ここがさらに重要です。
Aさん:
1.31%
Bさん:
3.29%
差は、
1.98ポイント
です。
住宅ローンは数千万円を数十年間借りるため、この金利差は極めて大きな影響を与えます。
35年間の住宅ローン総返済額を比較
Aさんの場合、
3,500万円を1.31%で35年間。
総返済額は、
約4,365万円
です。
一方Bさんは、
約4,261万円を3.29%で35年間。
総返済額は、
約7,180万円
となります。
その差は、
約2,815万円
です。
住宅ローンだけで約2,800万円の差
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 借入額 | 3,500万円 | 約4,261万円 |
| 金利 | 1.31% | 3.29% |
| 月返済 | 約10.39万円 | 約17.10万円 |
| 35年間総返済 | 約4,365万円 | 約7,180万円 |
| 総返済額の差 | 約2,815万円 |
もちろん、この2,815万円のすべてが「金利差による損失」ではありません。
Bさんは住宅そのものを約761万円高く購入しているためです。
それでも、
購入価格と金利の両方が上昇したことで、総返済額に非常に大きな差が生まれています。
2026年から30年間で比較するとさらに分かりやすい
ここからが本当のポイントです。
Aさんは2020年に購入しています。
2026年時点ではすでに6年間返済しています。
したがって、2026年から2056年までの30年間にAさんが支払う住宅ローンは、
約10.39万円 × 360か月
=
約3,741万円
です。
一方、Bさんは2026年に購入するため、
約17.10万円 × 360か月
=
約6,155万円
を支払います。
差額は、
約2,414万円
です。
つまり2026年以降30年間だけでも、
BさんはAさんより約2,400万円多く住宅ローンを支払う
ことになります。
Aさんはその約6.7万円を投資できる
毎月の返済差額は約6.7万円。
Aさんがこれを30年間、年4%で運用すると、
約4,651万円
になります。
ここが非常に大きなポイントです。
Aさんは、
住宅ローンが安い
だけではありません。
その結果として、
毎月のキャッシュフローにも余裕がある
のです。
その余裕を投資に回すことで、さらに資産差が拡大します。
2056年時点ではどうなっている?
2026年から30年後の2056年。
Aさんは2020年に35年ローンを組んでいるため、2055年ごろには住宅ローンを完済しています。
つまり2056年には、
Aさん
住宅ローン残高
0円
です。
一方、Bさんは2026年に35年ローンを組んでいるため、2056年ではまだ5年分の返済が残っています。
約4,261万円を3.29%で借りた場合、30年返済した時点の残高は、
約945万円
です。
つまり2056年時点では、
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 住宅ローン残高 | 0円 | 約945万円 |
| 投資資産 | 約4,651万円 | - |
という状態になります。
30年間の投資だけでも約4,651万円の差
ここで非常に重要なのは、
Aさんが「無理をして投資した」のではないことです。
Bさんより住宅ローン返済額が少ないため、
その差額を投資した
だけです。
つまり、
「住宅ローンの返済額が少ない」というメリットを、そのまま資産形成に利用した
ということです。
2020年購入派と2026年購入派の差を整理
ここまでをまとめてみましょう。
2020年購入のAさん
- 3,500万円の住宅を購入
- 固定金利1.31%
- 月返済約10.39万円
- 2026年以降の返済額が少ない
- 毎月約6.7万円を投資可能
- 年4%なら30年後に約4,651万円
- 2055年ごろ住宅ローン完済
2026年購入のBさん
- 約4,261万円の住宅を購入
- 固定金利3.29%
- 月返済約17.10万円
- 2020~2026年に家賃約576万円
- 2026年以降、Aさんより毎月約6.7万円多く返済
- 2056年時点でも約945万円のローン残高
「待った6年間」でBさんは何を得たのか?
もちろん、Bさんにもメリットはあります。
2020年から2026年まで住宅を購入しなかったことで、
- 住宅ローンを背負わなかった
- 転居の自由度があった
- 住宅価格が本当に下落していた場合には安く買えた可能性があった
- 住宅を購入するリスクを負わなかった
というメリットがあります。
したがって、
「賃貸で待った=必ず間違い」
ではありません。
問題は、
「住宅価格が下がる」と予想して待った結果、実際にはどうなったのか
です。
今回の条件では、
住宅価格も金利も上昇しました。
住宅購入は「住宅価格」だけで判断してはいけない
今回の検証から分かることがあります。
住宅購入を考えるとき、
「家が高い」
「家が安い」
だけを見てはいけません。
重要なのは、
① 住宅価格
② 住宅ローン金利
③ 家賃
④ 購入後の毎月返済額
⑤ その差額をどう運用するか
です。
特に住宅ローンは、
数千万円を数十年間借りる商品
です。
そのため、わずかな金利差でも長期的には大きな金額になります。
「住宅価格が下がるまで待つ」は意外と難しい
例えば、
「今は住宅価格が高いから、数年待とう」
という判断をしたとします。
その間に、
住宅価格が下がれば成功です。
しかし、
住宅価格が上昇する
+
金利が上昇する
+
家賃を払い続ける
となれば、
待ったことによって住宅取得コストが逆に増えてしまう
可能性があります。
2020年から2026年の住宅市場は、まさにそれを考えるうえで非常に興味深いケースです。
2020年購入者は「住宅価格の安さ」だけで勝ったわけではない
今回の比較で最も重要なのは、
2020年購入者のメリットが単純な住宅価格差だけではないことです。
Aさんは、
3,500万円という安い価格
で購入しただけではありません。
1.31%という低い固定金利
も確保しました。
そして2026年以降、
毎月約6.7万円
の返済差額が生まれます。
そのお金を年4%で運用すれば、
30年後に約4,651万円
になります。
つまり、
「安く買えた」+「安い金利を固定できた」+「毎月の余剰資金を投資できた」
という3つのメリットが重なっています。
では、2026年に買ったBさんが逆転する可能性はないのか?
もちろんあります。
例えば、
- 2026年以降に住宅価格が大幅下落する
- 2020年購入住宅の価値が大幅に下落する
- Aさんが投資をしない
- 投資利回りがマイナスになる
- Bさんが購入した住宅の資産価値が大幅に上昇する
といったことが起きれば、結果は変わります。
また、今回のシミュレーションでは、
住宅価格の将来価値を計算に入れていません。
これは意図的です。
住宅価格は将来どうなるか分からないため、
「同じ住宅に住むための取得・住宅ローン・家賃コスト」
を中心に比較しています。
年4%でも複利の効果は非常に大きい
今回、年7%から年4%に引き下げました。
すると30年後の投資資産は、
約8,176万円
から、
約4,651万円
まで下がります。
それでも、
約4,651万円
です。
投資元本は約2,412万円なので、
約2,239万円が運用による増加分です。
つまり、年4%という比較的控えめな利回りでも、
30年間という時間があれば複利の力は非常に大きい
ことが分かります。
重要なのは「投資利回り」よりも住宅ローンの毎月の差
ただし、このシミュレーションで投資利回り4%を過度に強調する必要はありません。
本当に重要なのは、
毎月約6.7万円の差額が30年間続く
という事実です。
仮に投資を一切しなかったとしても、
AさんはBさんより毎月の住宅ローン負担が軽くなります。
そしてその差は30年間で、
約2,400万円
にもなります。
投資をすれば、その差額がさらに膨らむということです。
今回のシミュレーションから分かる「住宅購入の教訓」
住宅価格が高いと、
「もう少し待てば安くなるかもしれない」
と考えたくなります。
これは当然の心理です。
しかし、住宅購入では、
住宅価格だけを予想してはいけません。
なぜなら、
住宅価格が下がるときに金利が上がる可能性がある
からです。
また、購入を待っている間にも、
家賃というコストが発生します。
したがって、
「住宅価格が下がるか?」
だけではなく、
「住宅価格+金利+家賃を合わせると、本当に待つ価値があるのか?」
を考える必要があります。
まとめ:2020年に買った人と2026年に買った人、得だったのはどっち?
今回の条件で比較すると、答えは明確です。
2020年に固定金利で購入したAさんのほうが大幅に有利
でした。
Aさんは、
3,500万円・固定1.31%
で住宅を購入。
一方Bさんは、
約4,261万円・固定3.29%
で購入しました。
その結果、
住宅価格
約761万円の差
35年間の住宅ローン総返済額
約2,815万円の差
2020~2026年の家賃
Bさんは約576万円
2026年以降の毎月の返済差
約6.7万円
となりました。
そして、その約6.7万円をAさんが年4%で30年間運用すると、
約4,651万円
になります。
「家が安くなるまで待つ」が正解とは限らない
2020年当時、
「コロナ不況で住宅価格が下がる」
と予想して家を買わなかった人は、決しておかしな判断をしていたわけではありません。
未来は誰にも分からないからです。
しかし結果として、
住宅価格は上昇し、固定金利も上昇しました。
そのため、
「住宅価格が下がるまで待つ」という戦略が、結果的には大きな機会損失になった
ケースも考えられます。
今回のシミュレーションは、その典型例です。
住宅購入で本当に見るべき数字は「家の値段」だけではない
住宅を買うとき、
「3,500万円か、4,000万円か」
だけを見るのではなく、
何%の金利で、何年間借りるのか
まで考えることが重要です。
さらに、
買わなかった場合に何年間家賃を払うのか
も考えなければなりません。
そして、
住宅ローンが安く済んだ場合、その余剰資金をどうするのか
まで含めると、住宅購入の本当のコストが見えてきます。
最終結論
今回の条件では、
2020年に3,500万円・固定1.31%で住宅を購入した人
と、
2020年には購入せず、6年間家賃8万円を払い、2026年に約4,261万円・固定3.29%で購入した人
を比較すると、
2020年購入者が圧倒的に有利
という結果になりました。
そして、2020年購入者が2026年以降に毎月浮く約6.7万円を**年4%**で運用すると、
30年後には約4,651万円
になります。
これは、
「住宅価格が安かった」という一度きりの差ではありません。
低い住宅価格と低い住宅ローン金利によって生まれた、
毎月の約6.7万円の差
が30年間積み重なり、さらに複利によって大きな資産差へ変わった結果です。
住宅購入を考えるとき、
「家が今後安くなるか?」
だけを見るのではなく、
「住宅価格・住宅ローン金利・家賃・投資機会まで含めて、今買うのと待つのではどちらが得なのか?」
という視点で考えることが重要なのかもしれません。
【今回の試算における注意点】
本記事の金額は一定の条件を置いたシミュレーションです。実際の住宅価格、住宅ローン金利、家賃、投資収益、税金、諸費用、固定資産税、修繕費などによって結果は変わります。
また、年4%の投資利回りは将来の利益を保証するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。
2026年8月のフラット35の最頻金利は、21~35年・融資率9割以下で年3.29%です。住宅金融支援機構によれば、フラット35は全期間固定金利型で、借入時に返済終了までの借入金利と返済額が確定する仕組みです。
※計算上の補足
本記事では比較を分かりやすくするため、2020年の3,500万円の住宅が2026年に約4,261万円になったと仮定し、Aさん・Bさんとも頭金0円、35年返済、ボーナス返済なしとして計算しています。また、投資は2026年から毎月約6.7万円を30年間積み立て、年4%で複利運用する前提です。
この条件では、Aさんの30年後の投資資産は約4,651万円となります。実際の投資では税金・手数料・運用結果などによって金額は変わります。


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