とある高断熱高気密住宅会社の営業担当者から一言
「わが社の住宅にすれば、年間30万円光熱費を削減できます。30年で1000万円近くの節約になります。」
これだけ聞くと、買わないと損ぐらいに思えてしまいますが、慎重に検討する必要があります。
高断熱高気密住宅にすることで削減できる光熱費って実はほぼ冷暖房費なんです。確かに平均的な家計の光熱費に占める冷暖房の割合は3~4割程度で大きいですが、そもそもの問題は、ほとんどの家計の年間光熱費って30万円程度か、それより下ということです。つまり全体で30万円ということは、その4割が冷暖房費と考えても、冷暖房費は年間12万円となります。ということは、例え、この冷暖房を0円にしても最大12万円の節約です。実際0円にすることはあり得ないですが。
問題は、この30万円の違いが生じる理由です。
このシミュレーションの謎を調べたところ、面白い事実が分かりました。
比較対象は無断熱住宅で、なんと24時間全館冷暖房を年中していたのです。
実際はあり得ないと思いますが、築40~50年の無断熱住宅で全館冷暖房をするのです。多分冷気も暖気も垂れ流しで常にエアコンはフル稼働だと思います。これで冷暖房費が35万円程度かかるが、高断熱高気密住宅では、同様の運転で年間5万円程度で済むということです。
ここで大きな落とし穴は、そもそもが性能が低い住宅で24時間全館冷暖房はあり得ないので、実際の冷暖房費12万円程度と比較すると年間7万円程度の削減にしかならない点です。 さらに、例え24時間全館冷暖房で比較するにしても、比較対象は、高断熱高気密住宅でない一般の新築でしょう。様々なシミュレーションがありますが、今の新築は断熱等級4が義務化されていますので、この住宅で例え24時間全館冷暖房しても年間15万円程度になると思います。つまり格安建売と比較しても年間の光熱費は10万円の違いであり、30年で300万円の違いとなります。50年住めば500万円の違いになるし、今後光熱費は値上げするのだから、やはり高断熱の方がお得なのでは?という声が聞こえてきそうです。
正直どっちがお得かは今後の電気代の動向や住宅性能の向上なども影響しますが、一つだけ言えることは、特に間欠の部分空調で今まで通りやっていくことに問題ない人、太陽光をつけて自家発電を併用する人にとっては、ほぼ間違いなく格安建売のほうがお得になると思います。
あらゆるものに言えることですが、同一商品を量産すれば単価を下げることができます。
家も同様で、大手パワービルダーは全国に同じような建売を多数建設しています。
同じものを作るとなると、木材や設備なども同一商品を大量購入することができるので、仕入れ単価を大幅に下げることができます。また設計や施工についても同じ作業の繰り返しのため、人件費も下げることができますし、短期間で建築が可能になるため、短期間に大量の家を建築することができます。
つまり断熱性能そこそこの建売は、かなり割安に買うことができます。実際同じような家を建てるにしても、注文ではなく建売住宅にするだけで500万円程度安くできると聞きます。
もし高気密高断熱住宅を希望するなら、そのような建売住宅はありませんので、注文住宅で進めることになりますが、その時点で500万円割高になります。さらに断熱性能上げるために追加で数百万円程度余分にかかるので、建売ならば、建物代2000万円で済むところが、高気密高断熱住宅ならば2800万円等になる可能性が高いです。もし初期費用で800万円の差が生まれるなら、光熱費の削減で差を埋めることはほぼ不可能です。さらに太陽光の自家発電効果を見込むなら、さらに両者の光熱費の差は小さくなるため、高気密高断熱住宅の方が安く済むことはほぼあり得ません。
もし、長期的な光熱費削減効果から総コストを減らす目的で高気密高断熱住宅を検討しているなら、考えなおしたほうが良いかもしれません。
しかしながら以下の理由ならば高気密高断熱住宅にもメリットがあると思います。
・より快適な環境で生活したい。
・何世代にも亘って100年以上暮らしたい。
・異常な暑がりや寒がりで光熱費が平均よりかなり高くなる。
実は、性能があまり高くない家の場合、エアコンでどんなに冬部屋を暖かくしても、壁や天井などが冷えていると、人は肌寒く感じてしまいます。もし、高気密高断熱住宅であれば室温だけでなく、壁や天井も暖かいので快適に感じるのです。
また、平均的な使い方で両者の光熱費の差は10万円程度と言及しましたが、100年暮らすなら、その時点で1000万円の差になるので初期費用を回収できます。また異常な寒がりで暖房の設定温度28度などにするなら、光熱費の差が年間15万円等になる可能性もあるので、高気密高断熱住宅の方が総コストが抑えられるかもしれません。


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