一昔前にヒアリングマラソンというものが流行りました。何時間もひたすら英語を聞き流すという行為です。これは、かなり効果的な方法なのですが、意図を理解せずに行うと全く効果がないです。例えるなら野球を知らない少年が、フォームも理解せず、重たいバットをがむしゃらに振り回す行為と似ています。プロはみな毎日の素振りが重要だと言います。裏を返せば、毎日素振りをしていれば野球がうまくなるとも読み取れます。実際正しいフォームで、目的を持って素振りすれば上達します。目的とは、つまり自分が試合のイメージを持って、飛んでくるボールを頭の中で描いて、バットを振るということです。では、正しい英語を聞く姿勢とはなんでしょうか。まずは英文法を理解して、聞く英文に出てくる単語をほとんど理解したうえで、内容がほとんど理解できる英文をまるで対話のように相手が話しかけてきていることを想定して聞くということです。最悪な例は、英文法も不完全で、ほとんど知らない単語が出てくる難解なCNNのニュースなどをただひたすら聞くことです。先ほどの少年の素振りとそっくりで全く意味がない行為となります。聞いても脳は全く理解できないので、思考を停止します。これでは馬の耳に念仏です。はっきり言いますが、勉強しても成績が伸びない子、スポーツしていても上達しない子、大人になっても何をやっても上達しない人はすべて同じ罠にはまっています。罠=「思考停止した状態で反復すること」です。例を挙げましょう。・何も考えずにひたすら教科書の文章を書き写す。・数学の問題が分からないので、答えをノートに書き写してやった気になる。・英単語を10回ずつノートに書く。・歴史の年号を何度も眺める・何も考えずに、ただ100回素振りの練習を毎日する。・筋トレでマッチョを目指して、ただ重いダンベルを無理やり10回持ち上げる。・金融などの売れている本を読んで丸暗記。・時事ネタを聞いたまま覚える。枚挙に暇がありませんが、かなりの人が当てはまるのではないですか?共通点は、頭を使わないので苦痛ではなく、やった気になることです。むしろ、人は、何かをやった達成感を求めている節があります。パブロフの犬って知ってますか?毎回犬に餌をあげる前に鈴を鳴らしてから餌をあげると、犬は鈴が鳴ると餌がもらえると認識します。両者に全く関係はないのですが、脳は、鈴がなると食べ物が出てくると因果関係のように認識するのです。もし、食べ物がなくても、鈴をならせば、犬は涎を垂らすようになるようです。幼少期から、何かを頑張ると何かができるようになり、大きな達成感を覚えます。この達成感は、何かを頑張ったことにより得られるのではなく、何かができるようになったことにより得られるものです。しかし、いつしか何かを頑張ったら、成果が0でも達成感を覚えるようになります。脳が、何かを頑張れば成果が得られると勝手な因果関係を作るのですね。私は赤ちゃんが頑張って言語を覚えたり、歩いたりすることによる達成感がずっと一生脳に染みついているのではないかと推察しています。
極論、ほとんどの英語学習者は、始めた頃は、英語を話せるようになりたいと強く思っていたでしょうか、いつしか勉強に疲れ、でも達成感はほしいという我儘な願いから、できるだけ頭を使わない楽な方法で頑張って、やった気になり、達成感を覚えるのです。
この最たる例がヒアリングマラソンの間違った使用方法です。多くの人は、ただ聞き流していれば良いという甘い誘惑に負けて、何時間もただ無心で聞き続けるという楽でかつ時間を浪費する方法に走ります。結果、本人は、今日は2時間も英語漬けになって、さぞ成長しただろうという空想を描き、達成感につつまれ、自分に美味しい食べ物を買って、幸せな時間を過ごします。まあご褒美のために頑張っているようなもんです。人間誰しも何も自分を成長させることをしないとつらいものです。毎日の生活にはりがないですから。なので、何かを頑張り、少しでも成長したと実感して、達成感を味わいたい、ご褒美がほしいと思うわけです。しかし、無心でヒアリングしても全く成長しません。無意味です。それなら毎日5分でもいいので、全力で言っていることを聞き取り、聞き取れるまで何度も同じ英文を聞き、聞き取れたら真似して話したり、どのような場面で使うのだろうとか、もし普段の生活でいきなりこの英文が出たら聞き取れるか想定しながら聞けば、脳はフルに活動し、みるみるうちに上達します。しかし、この勉強って、本当に自分の全力を出さないといけないので、かなりつらいんですよ。しかし、何かをできるようになるってつらいですよ。
長年英語をやってるのに話せない人は、間違いなく思考停止が原因です。ぶっちゃけ、学習方法はなんでもいいです。とにかく、英語を聞くとき、話す時に頭を使ってください。しかし、話せない人が、話す練習ばかりしないように注意してください。逆説的ですが、話せない人が話す練習をしても話せるようにはなりません。話せない人は何を言えば良いのか分からないのです、考えても無理ですよね?例えば、日本語が話せない赤ちゃんを1人で部屋に閉じ込めて、毎日1人で話す練習をさせたら話せるようになりますか?無理ですね。赤ちゃんが話せるようになるのは、一生懸命親の話す言葉を覚えて、それを口の動きから暗記して真似して話しているのです。ただ無心で真似しているわけではないです。どのような場面で、どんな表情で、誰に対して、どのような声の大きさで話しているのか観察しています。そして自分が同じシチュエーションになったら、そのことを思い出して同じように話すのですね。これは反射的に行っているものです。人間は同じ動作を集中して意識して頭を使って何度も繰り返すと、反射的にできるようになります。どんな教材でもいいです。自分が真似できるレベルのものを集中して聞いたり、読んだりして、どのような場面で使うものか想像してみてください。それだけで格段に英語力は上がります。
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