高気密高断熱住宅の電気代は年間20万円安くなるって本当ですか!?

家を購入する時、ほとんどの人が住宅価格に目を向けると思います。しかし、営業担当者等に話を聞くと、家は購入してからがお金がかかると言われます。特に冷暖房費が高くなり、今は電気代が高騰しているので、性能の低い家に住むと、冬場は1か月で6万円くらいかかることもあると聞かされ、青ざめた経験があります。

でも大手の住宅会社で話を聞いた時、高気密高断熱住宅を建てれば、初期費用は高くつくが、年間の電気代が20万円ほど安くなる試算もあると聞かされ心躍らされました。

光熱費ってお金を燃やすようなもので、払った分に対して何も残りません。しかしながら、性能の高い家に住めば、生涯安い電気代を享受できますし、家自体に価値があり、将来的にその価値が続くので、結果得をするというのです。

例えば、年間20万円節約できれば、30年で600万円の節約になります。

例え住宅価格が500万円高くても、30年で100万円の黒字になりますし、家自体の価値が500万円高いので、売る時に高く売れます。

この話を聞くと、購入時にお金が出せるなら絶対に高性能な家のほうがお得だと思いますよね?

どこに罠があるかお分かりでしょうか。

まずは一般的にどのような家と比較しているかが問題になります。聞いてみると、次世代省エネ基準の家といいます。これは、今どきの新築のほぼ最低水準の性能で、巷で格安で販売されている建売の住宅の多くが、この性能に近いです。断熱性能をUa値という指標で表しており、次世代省エネ基準は0.87となっています。東京と同じくらいの気温の日本の多くの地域では、この数字を断熱等級4ともいいます。

対して高断熱住宅とは、Ua値が0.23を下回っているような水準です。同様にこの数字以上を断熱等級7といいます。

両者の比較で冷暖房費で年間20万円も差がでるなら、絶対高断熱なほうがいいですよね?

でも待ってください。冷暖房だけで年間20万円も差が出るってことは毎月1万5千円以上差が出るってことですよね?

両者の冷暖房費を比較すると、片方は26万円、もう一方は6万円となっておりました。

ということは新築ローコストは冷暖房費に毎月2万円以上かかっていることになります。春秋は使わないと仮定すると、夏場の冷房と冬場の暖房だけで26万円の支出ということです。

我が家はUa値0.5程度ですが、年間冷暖房費は6万円程度です。そもそも冷暖房費に限らず、すべての光熱費の合計が我が家の場合25万円程度なので、あまりに冷暖房費がかかりすぎです。

どんなエアコンの使い方をしているのかシミュレーションの仮定を見てみると、10月~4月は設定温度22度で24時間常時全館暖房、5月~9月は設定温度26度で24時間常時全館冷房となっていました。

てか、ローコストな家買って、こんなセレブなエアコンの使い方する人多分いませんよね。不在時もいない部屋も、春、秋の心地よい晴れの日も問答無用で1年中冷暖房を家じゅう24時間つけっぱなわけですから、冷暖房めっちゃかかるわけですよ。

こんな住み方してる人皆無なんで、この想定自体が間違っていると思います。

一方高性能な新築は、断熱材にも窓にも、換気システムや空調、床暖房などの設備にも、さらに太陽光発電や蓄電池にもたっぷりお金をかけて月々の光熱費が安くなるように設計されているわけなので、同じ条件で戦わせたら勝ちっこないです。Tシャツ、短パンの素人と武装したプロの格闘家を同じ土俵で戦わせるようなものです。

それぞれ住み方に違いがあるのです。ローコストな新築を買った方は、性能をある程度抑える代わりに初期費用を安くしています。快適も求めればきりがないですが、ある程度のところで妥協することになるのです。例えば、春、秋はエアコンなしで窓をあけたり、6月上旬や9月下旬などの少し暑い季節は多少我慢して、エアコンではなく扇風機のみで過ごしたり、11月や4月などの比較的まだまだ寒さが残る季節は厚着をして過ごしたりと、我慢できるところは我慢しながら節約をして過ごす生活スタイルになります。

一方、高性能住宅に住んでいる人は、不在時も少し暑い、寒い時は躊躇なくエアコンや床暖房を使用します。もちろん暑さ・寒さの悩みから解消されるので、快適性はけた違いです。

両者、結果的に光熱費は似通ったものになります。つまり前者は快適性をある程度捨てることで光熱費を抑えているからです。しかしながら、初期費用や設備の更新費用がだいぶ抑えられるので、結果的に住宅にかけるお金は少なくて済むことになります。

結論として、最も伝えたいことですが、どっちに重きを置くかによって答えが変わるということです。もし、快適性を同等にするなら、性能の低い家で、24時間全館冷暖房することになるので、年間の光熱費に20万円程度の差が出る可能性もあります。その場合は快適性は同等で、性能の低い家は余分に年間20万円支払いが必要ということになります。実際、ここまでお金を払って性能の低い家を快適にする人はほぼ皆無だと思います。少なくとも私の周りでも、ネットの情報等でも、そのような無駄遣いをしている方は聞いたことがないです。結局、ほとんどの人が許容できる光熱費の上限ってある程度同じである場合が多いです。つまり性能の低い家では、予算が同じくらいなら、ある程度暑さ寒さに我慢する必要が出てくるわけです。多少寒いときは上着を着てしのぎ、多少暑いときは扇風機をつけたり、窓を開けたりするという工夫で電気代を抑えるわけです。

両者では、光熱費はほぼ同じで快適性は違うというわけです。この快適性にどれだけ重きを置くかは人によって違います。もっと言えば、そこにお金をかけれるほど経済的余裕があるかどうかで決まります。もちろん、家の断熱よりも食費のほうが重要なわけですし、日々の生活の中で、お金がなくて色々我慢している中で、室内の快適というのがどれだけ重要かは、価値観によって変わりますが、少なくとも人生の支出の中で家の断熱性能というのは、比較的優先順位が低いほうになると思います。つまり、家の中の廊下と居室の温度差がなくなる、寝起きなども常時暖かいなどの快適性を手に入れるために500万円~1000万円程度追加で支払うか、この部分を断念し、節約するかわりに、他にもっと重要な食費や教育費などにお金をかけるかの選択になるわけです。

決して高性能住宅に住めば、20万円節約できるわけではないからです。なぜなら今賃貸に住んでいる人、築古の家に住んでいる人で、年間の冷暖房費だけで25万円などの高額な費用を払っている人はほぼ皆無だからです。多くても年間10万円程度の光熱費を払っている人が高性能住宅を購入し、毎年20万円削減できるはずがないです。高性能住宅でも光熱費は無料ではなく、実際は全館24時間冷暖房すれば5万円~10万円程度はやはりかかってしまいます。なので、高性能の新築をせっかく買ったのに、光熱費があまり変わらないという事態に陥るのです。これは、20万円節約できるというシミュレーションが極端な例だからです。

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