新築販売者のポジショントークに注意

最も難しい買い物は、間違いなく住宅です。

例えばですが、エアコンの購入なら分かりやすいです。設置する部屋の大きさ、必要な機能の選定、求める機能がついているエアコン・メーカーの選定、省エネ性能などのこだわり、最安値で購入できる店の選択等やることは盛り沢山ですが、決して難しくないですし、失敗することも少ないでしょう。

これが住宅になるとどうでしょうか。エアコンと比べれば段違いに難しくなります。まず、ほとんどの購入者が住宅購入において何を重視すべきかが分かっていません。ただなんとなく、営業に勧められるモデルハウスなどを見学して、営業に言われるがままに見積書や住宅プランを提示され、案内された内容が気に入ったので、勢いで契約して、後で後悔する例が後を絶ちません。

住宅営業は営業のプロです。数ある営業の中でもかなりの高額商品を扱っているため、1件当たりの利益が桁違いなのです。つまりお客様は、営業にとっては、絶対に逃したくない獲物なわけです。

住宅って不思議な商品で、あらゆるものが集約された商品なので、素人には全く理解できないのです。しかしながら、重要な論点はいくつかに絞られており、そこを抑えれば失敗しないです。

もちろん中には、親身になって利益度外視で、お客目線で住宅購入を考えてくれる優しい営業の方もおられますが、大抵は、契約がとれるように誘導してきます(笑)

何よりも重要なのが、お客が買いたいと思えるようにすること、かつ急いで買わないと損をする、もしくは急いで買えば得をできると思わせることです。

よくあるポジショントークが以下のような場合です。

シチュエーション:高気密高断熱住宅を売りにしている営業の方が初めて来たお客さんとやりとりして  

         いる場面

営業
営業

モデルハウスはいかがでしたか。弊社はモデルハウスが標準仕様となっておりますので、今見た家をそのまま建てることが可能です。実を今キャンペーンをしておりまして、本日仮契約をしていただけましたら、100万円の値引きが可能となっております。そして、30万円相当の設備が無料でついてくる企画もございます。

客

実は、まだ家探しを始めたばかりで、他にもいくつか住宅会社の見学に行こうと思っているのです。100万円の値引きは非常に魅力的ですが、もう少し考える時間をもらえますか。

また、値引きを加味しても、貴社の住宅は予算オーバーで少し厳しいです。

営業
営業

●●さん。私も長年営業をしておりまして、●●さんのように多数の住宅会社を見学希望されている方を見てきました。私が知っている限り、どの住宅会社を見学された方でも、わが社の住宅を見られた方はほぼ間違いなくわが社と契約されています。

理由は、わが社が超高気密高断熱住宅を提供しているからなのです。他社に行けば、わが社より安いところもたくさんあるでしょう。おしゃれな家もたくさんあるでしょう。

しかしながら、●●さん。住宅において最も重要なのは、気密性能・断熱性能です。冬に寒い中、お風呂に入るとヒートショックでなくなる可能性があります。わが社は断熱性能が高く、24時間全館冷暖房を行っても、光熱費が年間20万円安くなるように設計されております。

他社の高断熱・高気密住宅はわが社をモデルにしており、わが社のようにノウハウがないため、性能も低く、価格も高く、非常にコスパが悪いです。

これからの時代、断熱義務化と言われ、新築はすべて一定水準以上の断熱性能を確保することが必須となります。もし●●さんが価格を気にして、断熱性能の高くない家を購入すれば、将来その家は売却もできない資産になるかもしれないのです。

わが社の住宅は●●さんにぴったりだと思いますので、是非良いチャンスを逃さないようにしていただきたいです。

客

私もできるなら貴社の住宅を買いたいと思います。でも予算が超えており、月々のローンの支払いが厳しいと思います。また、我が家の年収ですと、貴社の住宅を買うための住宅ローンが組めないと思います。

また、高気密高断熱住宅に憧れはありますが、不在なことも多く、幸い光熱費もあまりかかっていないので、我が家には不要かなと思っております。

営業
営業

わが社で家を建てられるお客様で●●さんのような考えをお持ちの方って本当に多いのです。

まず、わが社は、太陽光パネルと蓄電池を他社の半額で提供しております。今回の見積には、それも含めております。例えば、ローンの毎月のお支払いが10万円だとしても、太陽光による売電収入と蓄電池による光熱費削減額を計算すると毎月2万円は戻ってくると考えられますので、実質の支払額は8万円となります。さらにわが社の高断熱仕様ですと、年間の冷暖房費を20万円削減できますので、月1万5千円は節約できると考えると、実質の支払いは6万5千円にまで減らすことができるのです。

昨今電気代は上昇の一途をたどっておりますので、今後はさらに削減額は増えていくと思います。

他のご家庭でもそうですが、お子さんができると冷暖房費って節約するのが難しいですよ。小さなお子さんは熱中症のリスクも高まりますし、家じゅうを走り回るので、24時間全館冷暖房することが最も快適にお得に過ごせる方法となるのです。わが社の住宅は、このような使用方法を前提に標準性能で建てておりますので、他社より必ずお得に購入できます。

さらに住宅ローンの借り入れに心配があるのでしたらわが社提携の銀行をご紹介します。

通常でもお得ですが、本日仮契約すれば、さらに100万円の値引きと30万円相当の設備をプレゼントします。

しかも、わが社の住宅は購入価格は高いですが、その分将来売却する際も高値で取引できます。住んでいる間も安く、将来高く売れるので絶対お得ですよ。

客

毎月の支払額が6万5千円なら今の家賃より安いです。昨今電気代の値上げがひどく悩んでいたので、太陽光・蓄電池があれば今後も安心ですね。

住宅も気に入りましたし、維持費も安く、住宅ローンも組めるなら、是非住んでみたいです。

仮契約お願いできますか?

営業はお客を1人ゲットですね。このような流れはよくあります。人間って不思議ですが、無知であればあるほど、第一印象に強く影響を受けますし、目先のお得情報にひどく弱いです。冷静に考えれば、高い買い物で、普通なら買わないようなものでも、気分が高ぶり、今日買えば、非常にお得だと思うと急に買う理由を探し始めるものです。

バーゲンセールなどは、この顧客の心理を非常に巧みに利用しており、特に興味がない家電でも、定価8割引きなどと記載されていると急に興味がわくものです。例えば、今まで一度も使ったことのないコーヒーメーカーが5万円のところ8割引きの1万円で売られていれば、気になりますよね。そこに店員さんが来て、コーヒーメーカーのメリットを力説。客は、興味を持ち、買う理由を探し始めるものです。美味しいコーヒーが毎日飲めるし、コーヒー買うより作ったほうが安いし、新鮮なコーヒーなら健康にもいいし、今しか安く買えないから買っちゃえって感じです。もちろんですが、ほとんどの場合、使うこともなく家の倉庫に眠ることになりますが。

住宅も全く同じで、営業の言われることを真に受けて、急に買うことを前提に買う理由を探し始めるのです。

今回の営業担当者のポジショントークで主に目立つところは以下の点です。

・本来住宅選びにおいては、外観や設備、間取り、広さ、立地などと複数の重要な要素があるにも関わらず、高気密高断熱という住宅性能や光熱費などのお金の面ばかりを他社と比較したり、重要視してお客にお金のことばかりで住宅を選ばせるように暗に誘導している。

→これは、この会社が、住宅の気密・断熱性能に自信があり、商品開発を進め、他社より高性能な家を安く提供できる自信があるからこそ、勧めているわけです。本来外観や設備などに重きを置くお客もそのことを忘れ、瞬間的に光熱費などのお金の面ばかりで家を決めるようになってしまいます。

・光熱費の削減額が既成事実のように語られている。

→高気密高断熱住宅を提供する会社でよくみられる例ですが、比較対象の住宅の光熱費が高すぎます。よく年間20万円削減できるなどと言いますが、実際一般家庭で使っている冷暖房の光熱費って年間10万円もかかっていない例がほとんどだと思います。この違いはなにか?比較対象の家は無断熱の昔の住宅にも関わらず、24時間全館冷暖房をして、年間30万円程度かかっている想定をしているのです。それと違い、高性能住宅では同じことをしても年間10万円で済むので、20万円お得って言っているのです。実際は、別の新築で通常の在宅時にいる部屋だけ冷暖房すれば、年間10万円以下で過ごせると思いますので、他社と比較するとすれば、同じ光熱費で、全館24時間冷暖房するか、在宅時だけ必要な部屋だけ冷暖房するかの違いになります。このように説明すると魅力が一気になくなりますよね。20万円のインパクトを与えたいがためのポジショントークです。

・太陽光パネル・蓄電池が絶対お得のように説明する。

→実際お得な例も多いですが、そもそも設置できない例やお得でない例もあります。まず立地です。もちろんですが、日当たりのよくない土地の場合、太陽光発電はお得にできないです。蓄電池もある程度の電気使用量がないと蓄電しても最大限に使えないですし、蓄電量が多くなければ、毎月の節約額も多くないです。家族が多ければ、太陽光発電も蓄電池もフルに使えますが、共働きで平日日中はほぼ不在、土日も外出が多ければ、大きな恩恵が受けられません。しかも夫婦2人暮らしの場合などは余計にメリットが小さくなります。毎月1万5千円の削減などは、良い例を参考にしているくらいで、確実な情報ではないので、太陽光パネルや蓄電池を売りたいがためのポジショントークになります。

・資産価値があることを前提に話をする。

大手住宅会社営業によくあることですが、自社ブランドの強調がすごい時があります。●●社の家ならば何割高く売れるとか、確かにある程度間違いではないと思うのですが、確実な情報ではないです。そもそもが、いつ売ることを想定しているのでしょうか。多くの購入者にとって、買って数年で売ることってほぼないと思います。将来不要になる時は、老後などの例が多いでしょうから30~40年後になるのではないでしょうか。現状の不動産価格の算定で見れば、築30年越えは、どんな住宅会社が施工した家であろうと、建物価格はほぼ0もしくは、解体費用を求められ土地値より安くなるかもしれません。今から30年後にどうなるのか誰も分かりませんが、築30年越えにもなれば、●●メーカーだから高値で売れるというようなことはほぼなくなります。しいて言えば、売値200万円が300万円に増える程度のことでしょう。このような事実が購入時にどれくらい有利に働くかは疑問です。

いかがでしたでしょうか。冷静に考えれば、判断できることも営業の方もポジショントークとその場の気分の高まりが相まって、誤った判断を下し、後々後悔する例も非常に多いです。

契約後、他社の方がよくなり、解約金100万円払って他社に乗り換える例も多いですし、住み始めてから他社に魅力を感じたり、自分の家に不満を持つ方が多いのも事実です。

住宅購入者の8割が後悔している、家は3回買ってやっと満足するなどといわれるくらい素人には難易度の高い買い物です。それだけ、素人が営業のプロからカモにされやすいものとも言えます。

最後に、ポジショントークに住宅購入で失敗しないコツをいくつかお伝えしておきます。

・買わないことが一番のお得という前提で考える

→かなりの極論ですが、多くの場合買い物というのは買わないことが最もお得になります。もちろん上手に買い物すれば、利益がでることもありますが、素人ではビギナーズラックでもない限り難しいですし、営業担当者が、わざわざお得な買い物を提供してくれる可能性も低いです。値引きやキャンペーンなどでどんなにお得に見えても、得することなんてそうそうにないくらいの気持ちでいましょう。

・商品券などを目当てに住宅見学をしない

→商品券目当てで住宅見学をすると思わぬ罠に引っ掛かります。例えば5000円目当てに見学に行くと平気で3時間は拘束され、後日も営業の電話が何度もかかってきます。場合によっては、ポジショントークを真に受け、想定外の契約をしてしまうかもしれないですし、そもそも営業に引っ掛からなくても、貴重な休みの時間を何時間も5千円のために犠牲にするのはよろしくないです。丁度行きたい住宅会社で商品券がもらえるならグッドです。

・最も売れている住宅形態である建売住宅をまずは見学する

→建売住宅とは土地付で完成済みの新築が売り出されているものです。よくチラシなどを見かけると思います。買う買わないは別にして、一度見学することをお勧めします。建売住宅は、住宅のプロが悩みに悩んで万人受けする無難な住宅仕様で建てられているので、コスパも良く、失敗が少ないです。建売は、人気エリアの土地にコスパ良く建設されているので、ほぼ最安値で建てられる家を知る意味では丁度良いです。住宅選びには基準が必要ですので、いくつかの建売を見学し、そこから自分が求める追加の仕様やその他のオプションを考えると失敗する可能性が小さくなります。

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